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一番欠けているのは、読んだことについて自分の意見を表現することです。現在でも、日本の国語教育は読解と表現を区別することが多いです。これではPISA読解テストに対応出来ません。
次に欠けていることは、教材文について意見を言うときに、必ず文章に書いていることに基づくことです。自分の憶測や主観や体験だけを根拠にしてはいけません。
三つ目に欠けがちなことは、欧米の国語教育は常に読解教材を伴いますが、日本では読解教材を伴わない聞く話すだけの授業が行われることです。これでは国際社会に通用する読解力は育ちません。
従来、国語教育でよく行われた読解は、読解教材をできるだけ正確に理解したり鑑賞して味わおうとしたりすることです。PISAでも正確な読解は求められますが、その上に、「読んだことについて、正確に理解した上で、個性的で創造的な自分の意見を述べる」ことが求められます。
これは「オープンエンド」の問いといって、日本の国語教育ではなかなか行われなかったことです。
また、読解と表現が融合したものですから「読解表現力」と呼ぶこともできます。
クリティカル・リーディングは、日本の国語教育の伝統になかったことですから、いきなり子どもに押しつけてはいけません。
最初のステップは、まずごく簡単な課題について、理由をあげて意見を書く練習をさせることです。
例えば、「この物語のなかで、一番好きな場面はどこですか? どうしてですか?」のように尋ねます。
発言のできない子どもは、いきなり聞かれても答えられませんから、まずノートやワークシートに書かせてから、発言させればだんだんにできるようになります。
また、この活動は、毎時間のように行うことが大切です。毎時間、意見と理由を書かせ、発表させるという学習を繰り返せば、ほとんどの子どもは意見が言えるようになります。
私のウェブサイトのトップにリーディング・リテラシーというサイトがあります。その中に、小学校から高校までの実践事例が示されているので参考になさってください。
PISA型の授業を行う最初のステップは、PISA型の発問をつくることです。PISA型の発問をつくるには、まず上記の実例を模倣するところから始めてください。
その際、次の3点を守ってください。
1.その発問に答えることで、教材の一番大切なところがよくわかる発問をつくること
2.子どもが興味を持ち学習意欲を高める楽しい発問をつくること
3.はっきりと明確で、英語の疑問文になる、だれでも何を答えたらよいかわかる発問をつくること
PISA型という名称は本当はおかしくて、欧米ではどこでも普通に行われている国語の学習のことです。つまり、このような読解力を身につけないと日本人は国際社会に通用する人間になれないのです。
子どもたちが生まれた町で一生暮らすような時代なら、国際性など身につける必要はないでしょう。しかし、日本社会はどんどん国際化していきます。子どもたちも大都会や外国で働く機会が増えてきました。
かつては、アメリカで起こったファッションや流行が10年たって日本にくると言われましたが、インターネットによってあらゆる情報が瞬時に伝わるようになりました。
PISA型には、従来日本で行われてきたことも少なくありません。しかしまったく新しいこともあります。これからの時代に生きる子どもたちのために、従来行われてきた学習ももちろん大切にしながら、新しいことにチャレンジしてください。