- 著者インタビュー
- 社会
一言で言えば、生徒に活動させる授業ではないでしょうか。そのためには、「教師が全てを説明しきらないこと」が必要です。授業では、数多くの歴史用語を生徒に覚えさせることを目的とするのではなく、生徒が「活用」できる知識を身に付けさせることが必要です。そのためには生徒自身の活動がなければならないと思っています。
歴史学というのは、事象の意味づけをする学問です。本書では、1つの事象をどう捉えていけばよいか、というヒントが数多く示されています。中世史の関幸彦氏(日本大)、中近世史の小島道裕氏(国立歴史民俗博物館)、近世史の竹内誠氏(江戸東京博物館)、近代史の加藤陽子氏(東京大学)等、各時代の専門家から示唆に富む文章を寄せていただきました。ナスティオン氏(インドネシア・スバヤラ大学)からは、外国人の学ぶ日本史について書いもらいました。
学習指導要領解説や私たちの前書(原田智仁編著『高等学校新学習指導要領の展開 地理歴史科編』)で示した日本史授業づくりのポイントについて、さらに具体的な展開を提案したかったのです。そのために教室の息づかいが感じられるような内容としました。ここで示した授業モデル通りにはいかないかもしれませんが、生徒に活動させるためのツールや教師の動き・発問等を参考にしていただければと思います。
授業づくりをどう進めたらよいかということや学習評価のあり方について、実際に教育委員会で担当された経験をお持ちの先生方に書いていただきました。また、授業づくりは1人で悩んでいるよりも多くの仲間と創り上げていく方がはるかによいものができます。そのためのネットワークづくりを紹介しました。 前述の小島道裕氏も博学連携について触れていますが、V章では文書館との連携について紹介しています。また、小学校・中学校・高等学校の歴史教育の連携(いわゆる系統的指導法)についての報告もあります。
授業は生徒の思考力・判断力・表現力をどう鍛えるかということを目指すべきで、それが結局学力を伸ばすことになります。従来の日本史の授業観を少しでも変えることができれば幸いです。今取り組まれている先生方、これから取り組もうとされている先生方によって、本書で示した授業モデルを超える実践が出てくることを期待しています。