- 著者インタビュー
- 学級経営
教師が意図的・計画的に指導していくことが必要です。
現場では、よく次の言葉を聞きます。
「教師の仕事は、指導ではなく、支援をすること。」
支援と称して何も教えないのなら、「子どもの可能性を引き出し、伸ばす」ことはできません。
例えば、音読の力を伸ばすとします。
音読の仕方を教えずに、練習だけさせて見守っておいた状態では、子どもはいつまで経っても音読が上手になりません。
音読を宿題にしたとしても、子どもは下手なままです。
これはつまり、子どもの可能性が引き出されておらず、眠っている状態です。
音読の力を伸ばすためには、やはり、授業の中で、教師があれこれと手をうつことが大切になります。教師が範読し、真似をさせる。情景を思い浮かべさせるために、発問を入れながら音読させる。様々な音読の方法で練習させた後に、個別評定を行う。そんな手立てを次々に打つと、子どもの音読はみるみる上達します。
このように、自然発生的に音読が上手になるのを待つのではなく、教師が意図的・計画的に、様々な手をうっていくことこそ必要なのです。
学級づくりの最大のポイントは、「子どもが伸びていくような良いサイクル」をつくるということです。
まず教師が、子どもの頑張る場を用意します。
そして、子どもが頑張れるように、あれこれと手立てをうちます。
子どもが頑張ります。
それを、教師がしっかりとほめます。
ほめられた子どもは、また次も頑張ります。
それを、また,教師がほめます。
このように、「頑張る→ほめられる→ほめられるから頑張る→さらにほめられる」という良いサイクルをつくるのです。
この良いサイクルができるようになると、学級づくりはうまくいきます。
ところが、荒れた学級や、自信を失っている子が多い学級では、このようなサイクルをつくるのは、大変難しいのです。そこで、さらなる手立てが必要になります。その場合の手立ては,本書で具体的に紹介してあります。
「教育」には、「教え」・「育てる」という意味があります。
「教える」ことと「育てる」ことをバランスよくやっていくことがポイントです。
私の学級を参観した初任者や教育実習の学生が、次のような感想を言っていました。
「教師が何も言わなくても、子どもたちだけで進んで動いている。」
「何か問題が発生しても、子どもたちだけで解決している。」
これは、私が何も指導していないのでありません。
学級びらき初期において、様々な指導をした結果、子どもたちが自分で自主的に動くようになっているのです。
ちょっとした場面で、私が子どもにやり方を教えます。教えたのちに、そのやり方を活用させるようにします。
「教えて、活用させる」これがポイントです。
ポイントは、できない子もできる子も満足する授業にするということです。
授業では最低限、「教えるべき内容を、きちんと子どもが習得できた」という状態を保障しなくてはなりません。これが保障されていない授業は、どんなに活動が活発でも、子ども中心の授業になっているといっても、授業としては成立していません。
どの子にも教えるべき内容を習得させるには、教師が、「指導内容」、「指導ステップ」、「教え方」に精通しておく必要があります。それでこそ、意図的・計画的な指導が可能になります。
本書では特に、「指導のステップ」、「教え方」のポイントを示しています。
今年私は、25mが泳げない小学校3年生43人を教えました。25mを達成した子どもは、41人です。25m達成率は95%です。小プールで顔がつけられないような子が、大プールで補助具なしで25mを泳げるようになりました。
もちろん、もともと泳げる子にも、別の練習をさせました。泳げる子も、もっと泳げるようになりました。
できる子もできない子も満足するように、授業をつくっていく。これが最大のポイントです。
本書には、「子どもの可能性を引き出し、伸ばす」ための理論と方法,具体的事例を載せました。
方法を知るのは、極めて大切なことです。
方法を知るからこそ、明日の学級づくり、授業づくりに生かすことができます。
そして、もっと大切なのは、方法を支えている理論も知るということです。
理論を知ると、その方法を別の場面で応用することが可能になります。
本書は、理論と方法、具体的事例の3つが載っています。
具体的事例で場面をイメージしながら、理論と方法を学べば、きっと様々な場面で応用可能な「知恵」が得られるはずです。
教師には、「子どもの可能性を引き出し伸ばす」という使命があります。
その使命に正対しようとする全ての教師に、本書を読んでもらいたいと思います。