著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「子どもの可能性を引き出し、伸ばす」ことこそ、教師の仕事 
岡山県岡山市立城東台小学校大前 暁政
2011/11/25 掲載
 今回は大前暁政先生に、新刊『プロ教師の「子どもを伸ばす」極意―学級&授業づくりマスターBOOK―』について伺いました。

大前 暁政おおまえ あきまさ

昭和52年生まれ。現在、岡山市立城東台小学校教諭。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。著書に、『スペシャリスト直伝!理科授業成功の極意』(明治図書)、『なぜクラスじゅうが理科に夢中なのか 全部見せます小5理科授業』(教育出版)、『必ず成功する!授業づくりスタートダッシュ』(学陽書房)、『NHKおじゃる丸 クイズでおじゃる 目指せ小学校クイズ王』(執筆協力、NHK出版)などがある。

―先生は本書の中で、「子どもの可能性を引き出し、伸ばすこと」こそ、教師の仕事であると述べられています。可能性を引き出すには、教師にはどのようなことが求められるでしょうか。

 教師が意図的・計画的に指導していくことが必要です。
 現場では、よく次の言葉を聞きます。
 「教師の仕事は、指導ではなく、支援をすること。」
 支援と称して何も教えないのなら、「子どもの可能性を引き出し、伸ばす」ことはできません。
 例えば、音読の力を伸ばすとします。
 音読の仕方を教えずに、練習だけさせて見守っておいた状態では、子どもはいつまで経っても音読が上手になりません。
 音読を宿題にしたとしても、子どもは下手なままです。
 これはつまり、子どもの可能性が引き出されておらず、眠っている状態です。
 音読の力を伸ばすためには、やはり、授業の中で、教師があれこれと手をうつことが大切になります。教師が範読し、真似をさせる。情景を思い浮かべさせるために、発問を入れながら音読させる。様々な音読の方法で練習させた後に、個別評定を行う。そんな手立てを次々に打つと、子どもの音読はみるみる上達します。
 このように、自然発生的に音読が上手になるのを待つのではなく、教師が意図的・計画的に、様々な手をうっていくことこそ必要なのです。

―T章では「成功する学級づくり」についてまとめられていますが、子どもを伸ばし、学級づくりがうまくいくポイントは、どういったものでしょうか。

 学級づくりの最大のポイントは、「子どもが伸びていくような良いサイクル」をつくるということです。
 まず教師が、子どもの頑張る場を用意します。
 そして、子どもが頑張れるように、あれこれと手立てをうちます。
 子どもが頑張ります。
 それを、教師がしっかりとほめます。
 ほめられた子どもは、また次も頑張ります。
 それを、また,教師がほめます。
 このように、「頑張る→ほめられる→ほめられるから頑張る→さらにほめられる」という良いサイクルをつくるのです。
 この良いサイクルができるようになると、学級づくりはうまくいきます。
 ところが、荒れた学級や、自信を失っている子が多い学級では、このようなサイクルをつくるのは、大変難しいのです。そこで、さらなる手立てが必要になります。その場合の手立ては,本書で具体的に紹介してあります。

―先生は本書の中で、子どもに「自立性」「生きる力」を養うためのちょっとした場面における対応について述べられています。本書でも解説されていますが、そのポイントについて教えて下さい。

 「教育」には、「教え」・「育てる」という意味があります。
 「教える」ことと「育てる」ことをバランスよくやっていくことがポイントです。
 私の学級を参観した初任者や教育実習の学生が、次のような感想を言っていました。
 「教師が何も言わなくても、子どもたちだけで進んで動いている。」 
 「何か問題が発生しても、子どもたちだけで解決している。」 
 これは、私が何も指導していないのでありません。
 学級びらき初期において、様々な指導をした結果、子どもたちが自分で自主的に動くようになっているのです。
 ちょっとした場面で、私が子どもにやり方を教えます。教えたのちに、そのやり方を活用させるようにします。
 「教えて、活用させる」これがポイントです。

―W章では「成功する授業づくり」についても述べられています。子どもの力を引き出し、子ども自身が満足する授業づくりのポイントについて教えて下さい。

 ポイントは、できない子もできる子も満足する授業にするということです。
 授業では最低限、「教えるべき内容を、きちんと子どもが習得できた」という状態を保障しなくてはなりません。これが保障されていない授業は、どんなに活動が活発でも、子ども中心の授業になっているといっても、授業としては成立していません。
 どの子にも教えるべき内容を習得させるには、教師が、「指導内容」、「指導ステップ」、「教え方」に精通しておく必要があります。それでこそ、意図的・計画的な指導が可能になります。
 本書では特に、「指導のステップ」、「教え方」のポイントを示しています。
 
 今年私は、25mが泳げない小学校3年生43人を教えました。25mを達成した子どもは、41人です。25m達成率は95%です。小プールで顔がつけられないような子が、大プールで補助具なしで25mを泳げるようになりました。
 もちろん、もともと泳げる子にも、別の練習をさせました。泳げる子も、もっと泳げるようになりました。
 できる子もできない子も満足するように、授業をつくっていく。これが最大のポイントです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 本書には、「子どもの可能性を引き出し、伸ばす」ための理論と方法,具体的事例を載せました。
 方法を知るのは、極めて大切なことです。
 方法を知るからこそ、明日の学級づくり、授業づくりに生かすことができます。
 そして、もっと大切なのは、方法を支えている理論も知るということです。
 理論を知ると、その方法を別の場面で応用することが可能になります。
 本書は、理論と方法、具体的事例の3つが載っています。
 具体的事例で場面をイメージしながら、理論と方法を学べば、きっと様々な場面で応用可能な「知恵」が得られるはずです。
 教師には、「子どもの可能性を引き出し伸ばす」という使命があります。
 その使命に正対しようとする全ての教師に、本書を読んでもらいたいと思います。

(構成:及川)

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