著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ユニバーサルデザインで、どの生徒もわかる・できる英語授業を!
埼玉県秩父郡小鹿野町立小鹿野小学校教諭瀧沢 広人
2013/1/16 掲載

瀧沢 広人たきざわ ひろと

埼玉県秩父郡小鹿野町立小鹿野小学校教諭。
埼玉大学教育学部小学校課程卒業後、埼玉県の公立中学校、ベトナム・ホーチミン日本人学校、埼玉県秩父郡小鹿野町立小鹿野中学校勤務を経て、現在に至る。
大学4年より、教育技術の法則化運動(現:TOSS)で学び、授業を楽しく、わかりやすく、力のつく指導法を研究。その成果を著書に残す。多くの子どもたちが英語が好きになり、活動の多い授業は、生徒を飽きさせない。
現在は、達人セミナーやELECなど全国で講演・ワークショップを行っている。

―本書には、特別な支援が必要な子どもに配慮した英語授業アイデアが多数紹介されています。このような指導が必要だと思ったきっかけを教えてください。

 「すべての子」を対象にした授業づくりが私の授業での目標でした。そういうことを考えた場合、教室内にいる特別支援を要する生徒、グレーゾーンの生徒がいることに気づきました。そういった子への配慮は授業でどのようにしたらいいか考えていったのです。

―ユニバーサルデザインの視点を取り入れた指導で、それまでつまずきのあった生徒たちはどのように変わりましたか?

 生徒が変わったというより、私自身の生徒を見る目が変わってきました。以前の私では、「さっき言ったでしょ!」「なんでこんなこともわからないの」と思うことがありましたが、「もしかしたら、理解できないのはこの子の特性なのかも…。だったら、わかるように教えるのが私の仕事。話が聴けないなら、話を聴けるようにするのが私の仕事」そう思うようになり、自分の授業力、対応力を考えるようになりました。

―本書にはユニバーサルデザインの授業だけでなく、教材作成の工夫についても掲載されていますが、クラス全員がわかる教材づくりのためには、教師がどのような視点を持つことが大切でしょうか?

 スモールステップです。1つのことを教えるときには、どんな段階が必要なのか、最初から空所補充ができない生徒にはどうしたらいいのか、次の課題ができるまでにはどのような学習をしておかなければいけないかなど、小さなステップを考えるようにします。どうしてもわからなそうなところ、大事なところは、なぞらせる。なぞりをいれるのです。なぞるだけなら誰にでもできます。

―昨年末、通常の学級に在籍する公立小・中学生の6.5%に、発達障害の可能性があるとの結果が、文部科学省から公表されました。この結果を受けて、先生はどんなことが学校現場にとって必要だとお感じになりましたか?

 まず、発達障がいを理由にしないことです。あの子は発達障がいだからという理由で終わらせないことです。そうではなく、その特性を理解したうえで何らかの対策・対応を考えていく「時期」に来ているのだと思います。教師が発達障がいについての理解の段階はもう終え、今は「そういう子にどのように対応していったらいいか」ということを考える時期に来ているのだと思います。

―最後に、全国の英語の先生方に一言メッセージをお願いいたします。

 大学生の娘に自宅に帰ってきた際、「はい。これ、最近出した本」と言って渡しました。そして「教室には特別支援を要する生徒がいるから、その子たちのために、例えば、褒めるとか、繰り返すとか、時間を指定するとか、授業をする上で気を付けるべきことを書いた本なんだ」と娘に言いました。するとすかさず娘が、「これって、普通の子にも通用することだよね」と返ってきました。我が子ながら核心をついた発言に、「そうなんだよ。だからユニバーサルなんだ」と言って本の表紙を見せました。
 この本は、もしかしたら私たちが普段さりげなくやっていることが、特別支援を要する生徒にとっては優しい指導法、配慮につながっていることもあるということを理解してもらいたくて書いた本です。どうかラインマーカーを片手に、熟読してもらえたらと思います。そしてそういう指導の目を持って、授業にあたっていただければ、幸いです。

(構成:木山)
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