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どちらも発達障害のある子どもをつつむ学級づくりについて書いていますが、「あったかクラスづくり」の20個の取り組みは、どちらかというと今まさに学級が崩れかけている「崩壊Aレベル」のクラスをイメージしており、本書「あったか絆づくり」では、とりあえず学級が落ち着いて見える「育成Bレベル」のクラスを意識している点が異なります。
一見落ち着いて見えていても、よく観察すると、何かあると感情を爆発させて教室を飛び出してしまう子ども、自信のない気になる子どもが一人、二人はいるはずです。この子どもたちをそのまま放っておくと、ますます自尊感情が低下し、二次障害に陥ってしまいます。自尊感情を高めクラスをあたためるための手だてが必要です。
「あったか絆づくり」では、二次障害にスポットをあて、二次障害が元で引き起こしているであろう非行等に詳しい岩佐嘉彦弁護士とのコラボで、二次障害の防ぎ方を模索しています。
なお、いずれも「なるべく授業時間を削らないこと」「教師の過大な負担にならないこと」を念頭に取り組みを紹介させていただいています。あまりに手間のかかることや、授業時間にくい込む取り組みは、学校現場では現実的ではないからです。
手にとっていただき、明日から取り組んでいただけることばかりです。
その子どもの困難さの要因を考えることです。
たとえば、その子どもは脳の生物学的要因から、学習が困難で教室を飛び出すのかもしれません。WISC-WやK-ABC等の発達検査から、子どもの困難さやあるいは得意なことを知ることができます。
また、ご家庭の問題や環境から、落ち着いて学習できない状態かもしれません。
あるいは、いじめられていることが表面化せずに、教室に居場所がないのかもしれません。
これらのことが複合的に作用しているかもしれません。
様々なアセスメントをもとに、子どもの困難さを知ることが大切です。つまり子どもの「生きづらさを理解する」ことでしょうか。これが支援につながります。
「僕なんかいなくてもいいんだ」「ここから飛び降りてやる」などと叫ぶ子どもは心が傷ついています。心が傷ついたり心の奥底に怒りを感じている子どもは、それが自分の内面を攻撃したり、外に向かって攻撃したりします。自分の内面を攻撃する時は、ウツや自傷行為、拒食過食などの形で表れます。外に向かう場合は、他者を挑発したり、暴言や暴力をふるったりします。
それを防ぐために、1対1の専門家によるカウンセリングが大変効果的だそうです。しかし、学校で、通常の学級担任がたやすく取り組めることではありません。そこで、私は1(教師)対40(子ども)でも取り組めるようアレンジした「聞きザル・聞かザル」「リフレスピーチ」などを考案しました。本書中で紹介しています。大変効果がありましたので、ぜひお試しください。
クラスが崩れると学級に秩序がなくなり、発達障害のある子どもは、安心して学校生活を過ごすことができなくなります。早めに手を打つことが大切です。
それでも難しい状況なら、周りの先生方や管理職にSOSを出すことです。学校全体でチームを組んで取り組むのです。私も同じ学年の先生に悩み事をたくさん聞いてもらうなど助けてもらいました。プライドを捨ててSOSを出すのです。
100%の完成度を求めるとしんどくなります。60%のクラスの状態でも、担任の方を向いている子どもがたった一人でもいたら、最後まで頑張らなくてはなりません。
それでもどうしても心が折れそうになるほどつらかったら、休むことです。休職した次の年に復帰して、立派に学級経営をしている仲間を私はいっぱい知っています。
教師の仕事は大変ですがやりがいもある仕事です。頑張りましょう!