著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
数学的活動の“仕方”を教えよう!
筑波大学附属中学校教諭北島 茂樹ほか
2013/3/27 掲載
 今回は北島茂樹先生、坂本正彦先生に、新刊『中学校新数学科 数学的活動の実現 第1学年編』について伺いました。

北島 茂樹きたじま しげき

筑波大学附属中学校教諭、日本数学教育学会数学教育編集部常任幹事、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)2011国内専門委員、前東京都立大江戸高等学校教諭。

坂本 正彦さかもと まさひこ

筑波大学附属中学校教諭、日本数学教育学会出版部幹事。

―本書では、数学的活動の“仕方”を生徒に指導することの重要性が強調されています。それはなぜでしょうか。

北島先生:数学的活動を授業に位置付けるとき、授業者は恐らく生徒をどのように活動させるかについて考えるはずです。そして、そのために必要な教材は何か、あるいは発問や板書をどのようにするかなど指導法についても考えていきます。もちろんそれは正しい考え方なのですが、すべて生徒に活動をさせるための準備に当たります。
 一方、実際の授業で活動をするのは生徒自身です。そこで本書では、活動する生徒が、次は自らの力で活動ができるように、数学的活動の“仕方”を習得させるための指導を重視しました。 

―学習指導要領には3つの数学的活動の類型が示されていますが、1つの授業の中で複数の活動が行われることもあり得ます。本書でも実際そのような実践事例が多く紹介されていますが、数学的活動を1時間の授業の中で組み立てていくポイントを教えてください。

坂本先生:1つの授業の中には、様々な数学的活動の場面が織り込まれています。例えば、生徒が数学を利用して考える活動を行っている途中に数や図形の性質を見いだすことがありますし、見いだした性質を他の生徒に伝えたいと考える場面もあるでしょう。その場合、伝えたいことをより明確にするために、数学的な表現を用いて、筋道立てて説明する必要が生じます。
 このように、数学的活動の3つの類型は互いに関連しています。そこで大切なことは、生徒が行っている活動について、「これはどのような活動なのか」「生徒はどのような仕方を身に付けようとしているのか」といったことを授業者が明確に意識することだと思います。
 本書で紹介する実践事例は、どれも魅力的な授業です。これらの授業では、生徒が活動の仕方を身に付けるために「どのような場面が設定されているのか」「そこで何を学ばせたいのか」などに対する意図が明確かつ具体的であることが共通しています。

―中学1年の生徒が「説明し伝え合う」数学的活動を“自分なりに”できるようになるために、先生はどのような指導を行えばよいのでしょうか。

坂本先生:生徒たちは、小学校時代に具体物を通じて自分の考えを伝える経験を少なからずしてきています。しかし中学校では、扱う内容が次第に抽象的になり、論理性が求められてきます。自分の理解や考えを言語化し、他者に論理的に伝えるためには、まず自分と他者の理解の相違点や共通点を生徒自身に認識させなくてはなりません。そのうえで他者が理解できるように言葉で説明させる指導が重要になってきます。教師は、生徒の未分化な思考を他の生徒たちに伝える環境を保証してあげると同時に、必要に応じてわかりやすい言葉に翻訳するなどの支援も考える必要があります。それが、生徒が“自分なりに” 説明し伝え合うための大事な一歩になると思います。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

北島先生:生徒が授業者の指示に従って楽しく活動するだけの授業と、活動を通して生徒が知的に成長する授業。これらの違いをもたらすものは何でしょうか。それは、特別な教材でも、特殊な指導法でもありません。すべては、生徒が数学的活動の“仕方”をわかっているかどうかにかかっています。日々の数学の授業において、「数学的活動を通して」生徒をよりよく育てていくために、本書を活用していただければ幸いです。

(構成:矢口)
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