- 著者インタビュー
- 算数・数学
数学的な思考力や表現力は、それを使うことによって身に付き、伸びるものです。そのためには、生徒が問題に対して自分の考えをもつことができるような数学的活動を仕組んだり、一人ひとりの生徒が自分の考えを表現できるような小集団活動を取り入れたりするなど、授業の中で生徒が考え、表現する機会を増やす工夫が必要です。
また、表現の質を高めるために、生徒がよい表現に出会い、それらを自分の表現として取り入れて(真似して)いくことも重要です。そこで、生徒たちから出てきたよい表現を学級全体で共有したり、ときには生徒の言葉を使って学習のまとめをしたりすることも必要であると考えています。
思考過程をノートに残す、とは、考えの基になる既習事項や考える道具となる図や表などをかいたり、生徒同士で考えを交流しながら、お互いの考え方のよいところや修正が必要なところを書いていくことです。
ただ、考えを書くように指示しても、何を書いてよいかわからない生徒は多いため、どういう方法や視点で書くとよいのかを指導することが大切です。例えば、式で表すのか、言葉で説明するのか、図にかき表すのか、活動したままを書き表せばよいのか、キーワードのみを書くのか…などを教師が具体的に示す必要があります。
わかるわからない、できるできないがはっきりする数学の授業において、生徒が学習意欲を持続できるかどうかは大変重要な問題です。ですから、授業後にわかったことやできるようになったことを生徒がはっきり意識でき、学習への満足度や次の授業への意欲を高められるようにする必要があります。
このように考えると、ノート指導というよりも、大事なことが生徒のノートに残るように、つまり大事なことが生徒に伝わるように、授業そのものに磨きをかけていくことが重要なポイントになると考えます。授業後の生徒のノートを見れば、その日の授業が生徒の目にどのように映ったのかは一目でわかります。
授業の中での教師の言葉や生徒とのやりとりは、形には残りません。一方、ノートを見れば、今日の授業で何がわかり、何ができるようになったのかといったことや、今日使った数学的な考え方は何だったのかといったことを、すぐに知ることができます。さらに、ノートを通して授業の中で言葉を交わすことができなかった生徒と会話をすることもできます。本書をきっかけに生徒のノートの書き方や書いた内容に目を向け、よりすばらしい数学の授業をつくられる先生が増えることを期待しています。