- はじめに
- 第1章 思考力・表現力を伸ばすためのノート指導7つの大原則
- 大原則1 ノートの使い方を明確にする
- 大原則2 思考過程をノートに残す
- 大原則3 ノートを活用して他者と交流させる
- 大原則4 学習のふり返りをさせる
- 大原則5 生徒の個人差に対応する
- 大原則6 ノートとの関連を意識して板書を工夫する
- 大原則7 ノートの点検・評価で生徒と対話する
- 第2章 思考力・表現力を伸ばすノート指導の工夫52
- 1年
- 1 数直線に2数の和を表すことで,加法の法則に気付かせる(正の数・負の数)
- 2 「分けたり,合わせたり」で計算力アップ(正の数・負の数)
- 3 項の意識と途中式の記述を徹底させる(文字と式)
- 4 文字式の計算を図を使って表現させる(文字と式)
- 5 一人のつまずきを学級全体の学びに生かす(文字と式)
- 6 文字→数→文字で考え,文字への抵抗感を軽減する(文字と式)
- 7 問題づくりを通して文字式の理解を深める(文字と式)
- 8 大変さを体験させることで,等式の性質や移項のよさが実感できる(方程式)
- 9 方程式のつまずきとその対策(方程式)
- 10 等式の性質をより深く理解させるために(方程式)
- 11 文章題は図や表をかいて状況を把握させる(方程式)
- 12 式・表・グラフの関連を意識して数量関係をとらえさせる(比例と反比例)
- 13 座標をつないで絵をかかせる(比例と反比例)
- 14 距離のイメージをつくり,作図の手順をまとめさせる(平面図形)
- 15 模型を動かしながら図形の移動のイメージをつくる(平面図形)
- 16 おうぎ形は円全体の何分のいくつかを考えさせる(平面図形)
- 17 点をイメージできる教具で平面の決定を実感させる(空間図形)
- 2年
- 18 多様な式の見方や扱い方ができるようにする(式の計算)
- 19 ミスを見つけることで,計算を見直す力をアップする(式の計算)
- 20 ノートに書きながら規則性に気付かせる(式の計算)
- 21 1つの文字を消去し,一次方程式を導くことを意識させる(連立方程式)
- 22 割合の問題は視覚的に理解できる図を考えさせる(連立方程式)
- 23 速さの問題は図や表を利用して状況を把握させる(連立方程式)
- 24 式・表・グラフの1つの表現から,他を表現する経験をさせる(一次関数)
- 25 略図をかいてイメージをもたせる(一次関数)
- 26 水を多く入れても2倍にならないのはどうして?(一次関数)
- 27 ノートに考えを書き,説明させる(一次関数)
- 28 生徒が考えた図を基に授業を展開する(図形の調べ方)
- 29 多様な考え方を説明し,交流させる(図形の調べ方)
- 30 三角形の内角の和が180°であることを多様な方法で説明させる(図形の調べ方)
- 31 n角形の内角の和を既習事項を基に考えさせる(図形の調べ方)
- 32 多角形の外角の和を多様な方法で求めさせる(図形の調べ方)
- 33 論証指導@―条件に合う図を作図し成り立つ性質を見つけさせる(図形の調べ方)
- 34 論証指導A―説明文を書かせる(図形の調べ方)
- 35 論証指導B―記号を使い読みやすい証明に変えさせる(図形の調べ方)
- 36 論証指導C―既習事項を使って証明(説明)させる(図形の調べ方)
- 3年
- 37 1〜100までの素数をノートにまとめさせる(式の展開と因数分解)
- 38 多項式の乗法を図や表に表して,イメージをつくらせる(式の展開と因数分解)
- 39 紙タイルを具体的に操作して,因数分解の仕組みを理解させる(式の展開と因数分解)
- 40 √2を実測させ,その実在性をイメージさせる(平方根)
- 41 a√b⇔√cの変形(平方根)
- 42 √の計算の多様な見方・扱い方ができるように指導する(平方根)
- 43 √2+√3=√5でないことをいろいろな方法で説明させる(平方根)
- 44 完全平方式をつくる方法を,視覚的に理解させる(二次方程式)
- 45 解の公式のつまずきを解消する(二次方程式)
- 46 相似な三角形を見いだしたり,つくりだしたりさせる(図形と相似)
- 47 等間隔に分けることで,比を視覚的にとらえさせる(図形と相似)
- 48 補助線を引くことで,相似な図形を見いだす経験をさせる(図形と相似)
- 49 直角三角形をつくり,線分の長さを求める(三平方の定理)
- 50 三平方の定理の様々な証明を紹介し,興味・関心を引き出す(三平方の定理)
- 51 三平方の定理の逆を,円を利用して証明する(三平方の定理)
- 52 直方体の対角線を,教具を使ってイメージさせる(三平方の定理)
はじめに
近年,子どもたちを取り巻く社会的環境は,少子高齢化,国際化,情報化など,大きく変化しています。このような中で,次代を担う子どもたちには,自ら課題を発見し解決する力やコミュニケーション能力,物事を多様な観点から考察する力,様々な情報を取捨選択できる力など,様々な力が求められており,これまで以上に「生きる力」が必要とされています。
平成20年1月の中央審議会答申では,算数・数学科について,「生きる力」をはぐくむ手だての1つとして,基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,それらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力を育成することの重要性が示されています。また,学習指導要領の改訂の基本方針として,「数学的な思考力・表現力は,合理的,論理的に考えを進めるとともに,互いの知的なコミュニケーションを図るために重要な役割を果たすものである」と述べられています。このように,生徒の思考力・表現力を伸ばすことは,今後の数学授業における重要な課題の1つです。
私たち教師は,数学の授業の中で生徒の思考力・表現力を伸ばしていかなければなりません。思考力・表現力は,それを使うことによって身に付き,伸びるものですから,すべての生徒に身に付けさせようと考えるならば,すべての生徒にそれを行う場を与える必要があります。これまでの授業でも,生徒が自ら考え,解決の見通しをもち,考えを表現する場面はあったとお考えの先生方は多いと思います。しかし,そこで粘り強く考え,表現し,試行錯誤しながら活動していたのは,“すべての”生徒ではなく,数学が得意な“一部の”生徒ではなかったでしょうか。すべての生徒が取り組むことのできる活動を準備したり,意図的,計画的に授業に位置付けたりすることが,今後さらに求められてくるのです。
ノート指導に力を入れて実践されている先生方は,すでに感じておられると思いますが,生徒一人ひとりの思考力・表現力を伸ばすためには,ノートの活用が不可欠です。ノート点検をして,生徒の感想や気付き等に目を通すと,いつも新たな発見があります。例えば,生徒の理解度,多くの生徒がつまずいている問題,予想していなかった(教師が忘れかけていた)視点,教師の指導のまずさ…などです。そして何より,集団の中ではみえにくかった生徒一人ひとりの学びが,ノートからみえてきます。
一方生徒は,ノートを活用することで,漠然とした自分の考えをまとめることができたり,自分の思考過程をふり返ることができたり,自分のメモ書きを基に説明することができたり…と,自らの学びの質を高めることができます。
以上のようなことを踏まえ,本書は中学校数学における「ノート指導」に焦点を当て,生徒一人ひとりの思考力・表現力を伸ばすための具体的な指導の工夫やアイデアをまとめたものです。
第1章では,ノートを何のためにつくらせるのか,ノートをどのように活用させるのか,ノートと板書との関連や個人差への対応をどうするのか…などのノート指導の基本的な考え方を,「思考力・表現力を伸ばすためのノート指導7つの大原則」としてまとめています。第2章では,「思考力・表現力を伸ばすノート指導の工夫52」として,実際の生徒のノート記述を基に,ノート指導の工夫やアイデアを具体的に紹介しています。
生徒の思考力・表現力を育てる数学授業の実践に,本書を少しでも活用していただけたら幸いです。
最後に,企画から編集等に至るまでお世話いただいた明治図書の矢口郁雄氏に心より感謝申し上げます。
平成25年6月 /楳木 敏之
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- 明治図書
- 中学校数学の表現力の指導に関心があったので、参考になりました。2021/5/440代・中学校教員
- 生徒の実際のノートがたくさん取り上げられている点がよい2017/7/3030代・中学校教員
- どのようなノートの取り方があるのか、具体があり分かりやすかった。2015/9/1640代・中学校教員