- 著者インタビュー
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今般の学習指導要領国語では、言語活動例を通して指導することを一層重視しています。しかし、言語活動そのものを教師自身が実際に行った経験は少ないのではないでしょうか。そのため、言語活動のグッドモデルを十分にイメージできないままに言語活動を子どもたちに求めてしまい、その結果、指導事項との関係付けが難しいといった学校現場の悩みを聞きます。そこで、本書では、言語活動そのものの完成イメージやその遂行のプロセスなどを示すことで、教師自身が言語活動の具体像を描くことができ、何より身に付けようとする能力を設定しやすくなることをねらいとしました。
ブックトークとは、文字どおり、本について話をすることです。その本の面白さを伝え、聞き手にその本を読んでみたいという気持ちを起こさせることが大切です。そのためには、選書のテーマや冊数、観点に基づいた読み方、時間や方法等の条件に即した紹介、紹介する際の話し方などを工夫することがポイントです。本書では、このブックトークを第3・4学年に配置していますが、学習指導要領国語の「読むこと」の指導事項に応じたレベル(評価規準)を設定すると、どの学年でも行うことができる言語活動です。
学校図書館は、子どもたちが自由に好きな本を選び、静かに読みふける場を提供したり、子どもたちが面白いと思う本や役に立つ本などを紹介して読書の楽しさを伝えたりできる、一番身近な「読書センター」です。また、各教科等での学習のために活用されるとともに、各教科等の学習で学んだことを確かめたり資料を集めて読んだりしながら、自分の考えをまとめて発表するなどの主体的な学習活動を支援するための「学習情報センター」として、その威力を発揮します。このような重要な機能を再確認し、国語科のみならず各教科等の学習においても積極的に活用し、様々な言語活動に取り組むことが期待されています。
本書で取り上げた30事例は、学習指導要領国語の「読むこと」に示されている言語活動例を中心にその具体像をモデル化しています。実際の授業においては、中核となる教科書教材の特性を捉え、身に付けようとする能力の実現を図るために、どのような言語活動がふさわしいかを、まずは30モデルの中から選定していくことをお薦めします。30モデルは、当該学年の指導事項を踏まえることで、どの学年でも取り上げることができます。特に、低学年は中学年までのモデル、中学年は低学年や高学年のモデル、高学年は中学年のモデルも含めて参考にしてください。中核となる教科書教材の取扱いについては、全てのモデルに「○○の手順」という項立てがありますので、その手順の途中に位置付けて活用することができます。
言語活動を通した国語科授業が上滑りしたものになってはいけません。何のために、その言語活動を行うかを明確にすることが重要です。活動の中に「学び」を、そして、「能力」を意図しなければ、それは十分な意味を成しません。いわゆる「楽しい」や「面白い」といった抽象的なイメージが先行しがちな言語活動には、単なる活動の絶対量の保証のみならず、その活動の質を上げることが求められます。そのために今後は、言語活動そのものの特徴を捉える研究も重要になります。授業においては教師自身の実体験に基づく言語活動の設定が期待されているところですが、本書はそのつなぎの役割を持ち合わせています。本書をお読みいただくことで、目の前の子どもたちの言語活動の中に、質の高い「学び」と確かな「能力」を描くことができるはずです。