著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
人まねOK!ICTで「できたらいいな」が必ず実現できる
兵庫県朝来市立山口小学校教諭國眼 厚志
2013/9/26 掲載
 今回は國眼厚志先生に、新刊『学級担任のための普通教室ICT活用術』について伺いました。

國眼 厚志こくがん あつし

1963年、兵庫県日高町(現豊岡市)に専業農家の長男として生まれる。豊かな自然の中で幼少を過ごし、岡山大学教育学部卒業。兵庫県八鹿中学校に理科教師として勤務。9年間勤めた後、兵庫教育大学大学院に現職として入学。原体験教育を研究する。在学中に『環境問題を考えて活動しよう』『自然観察で楽しく遊ぼう』を出版。中学校教師を14年勤めた後小学校に異動。以後『文系教師のための理科授業note3・4年編』『同5・6年編』『同スキルアップ集』『ワークシートでらくらく科学クラブ』『同Part2』『同Part3』『同サバイバル編』『教師のためのICT活用ネタ70選』『教師のためのラクラク便利帳92選』『プロジェクター活用で授業は劇的に変わる』『壁新聞で教室が大変身!』『3倍はやくこなせて10倍うまく仕上がる!小学校教師の仕事術』『文系教師のためのキットでバッチリ理科授業』を出版。理科教育、情報教育、学級経営を専門とし、多方面で活躍。

―本書は、その書名のとおり「学級担任」の先生が「普通教室」でできる「ICT活用」のための本ですが、まず最初に教室に揃えたいICT機器は何でしょうか。

 最初に揃える機器は間違いなくプロジェクターです。それもその教室専用機を揃えたいですね。学年1台とか2教室に1台では、見せたいときに見せられません。最近は、一流とされるメーカーからも3万円程度で購入できる明るいプロジェクターが出ています。ぜひ予算を上手に使って揃えたいです。

―デジタル教科書が全国の学校に導入されるのも、いよいよ現実味を帯びてきましたね。先駆けて使ってみて「デジタル教科書ならでは!」と感じた魅力を教えていただけますか。

 一番使っていいなと思うのは国語です。本文を黒板に書く必要がないだけでも購入する価値があります。詩や物語の朗読もプロの読みを聞かせてくれます。
 社会も、使ってとてもよいと思いました。資料や地図、グラフなど大きく見せたいものがあらかじめオブジェクトになっていて後ろの席の子までよく見えるように作られています。動画もリアルでその場にいる雰囲気にしてくれます。紙物を何時間もかかって作る以上の臨場感あふれる授業にすぐにしてくれます。
 意外と思うかも知れませんが、道徳のデジタル教科書も本当に使い勝手がいいのです。資料の「先読み」ができないので、子どもたちが本当によく考えて意見を発表してくれます。

―授業でICTを活用する中で、最も子どもたちが喜ぶのはどんな場面でしょうか。

 少し高度で機器も必要になるのですが、私は、子どもに使わせるICTを標榜しています。電子黒板ですでに書かれている問題の上に注釈をさせる、線を引かせる、液晶タブレットに簡単な図を書かせる、授業前の答え合わせを宿題プリントを投影しながら進めさせる、そんな能動的なICT活用を続けることで、教室で機器を使うことが当たり前になり、特別なことでなくなるとリラックスしてどんどん力をつけてくれます。

―本書でもおすすめアプリが色々紹介されていますが、学校の先生には必須?というアプリベスト3を教えていただけますか?

■授業で使うには…

 パワーポイントと、手書き入力ソフトのペンプラス、絵や写真を入力してすぐにプレゼンに使えるフォトショップでしょうか。今後は、パワーポイントよりも、授業中にどんどんプレゼンが進化する「ミミオスタジオ」や「アクティブインスパイア」がとてもおもしろいと思います。書き加え、隠し、オブジェクト挿入など、準備するプレゼンではなく、操作して動かすプレゼンにこれからは変わっていくでしょう。

■校務で使うには…

 エクセル一太郎です。ワードは苦手なのでほとんど使わないのです。オブジェクトがどこに行くのかわからないですから。

■iOS(アップルのオペレーティングシステム)では…

 マップEvernoteボイスメモをよく使います。EvernoteはパソコンにもiPadにも同期できるので秀逸ですね。

―最後に、これからICTを取り組む先生方や、さらにバージョンアップして活用していこうという先生方へ向け、メッセージをお願いします。

■これからICTを使う先生へ

 ICTはどんどん進化していく分野です。人まねから始めてもいいので、とにかく使い始めましょう。近くに得意な人がるといいですが、いなくても本を読めば何とかなります。まずは機器を揃えるところからです。できれば自分の教室専用のプロジェクターを用意しましょう。それだけでもだいぶ違いますよ。

■さらにバージョンアップしていこうという先生へ

 とりあえず、パソコン画面やプリント、資料を映す……ということについては大丈夫だと思います。デジタル教科書も使えるでしょう。これからは、映したものに自分なりの書き込みを入れることです。どうやって入れるかは、電子黒板や液晶タブレットを使うことを考えます。単に映すことから、映ったものを活用し自分なりの味を加えた投影ができるようになれば、一歩前進でしょう。

■すべての先生へ

 もう一つ。すべてがICTでうまくいくということではありません。ICTは一つの手法です。思いっきりアナログの方がうまくいくことも多いのです。従前からの手法を古いと言って扱いを悪くしないでください。チョーク1本で見事に板書をしてうならせる授業も大切なのです。私の教室にはデジタル出力された掲示物は1枚もありません。壁新聞も得意ですが、すべて手書きです。学級目標もプリンターから出たものではないのです。デジタル一辺倒にだけはならないで欲しいと思います。アナログのよさを認めながら、ICT活用のメリット(保存性、再現性、表現力、時間短縮など)をいっぱい活用した授業や教室運営、校務処理を行っていただけたら幸いです。

(構成:木村)
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