著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
すべての生徒が意欲的に参加しわかる授業を!
授業のネタ研究会常任理事河原 和之
2014/1/30 掲載
 今回は河原和之先生に、『スペシャリスト直伝! 中学校社会科授業成功の極意』について伺いました。

河原 和之かわはら かずゆき

東大阪市の中学校に37年勤務。現在、立命館大学、聖トマス大学、関西大学中等部非常勤講師。中学校教科書『中学生の公民』(帝国書院)編集協力者。授業のネタ研究会常任理事。社会系教科教育学会理事・経済教育学会理事。近現代史教材・授業づくり研究会事務局長。NHKわくわく授業『コンビニから社会を見る』出演。NHK教育テレビ『世の中なんでも経済学』『世の中なんでも現代社会』番組委員。著書に『歴史リテラシーから考える近現代史 ―面白ネタ&「ウソッ」「ホント」授業―』『<活用・探究力を鍛える>「歴史人物42人+α」穴埋めエピソードワーク』『100万人が受けたい! 中学社会』シリーズ(明治図書)などがある。

―クラブ活動や生徒指導等、学校現場が忙しい中、いつ教材研究をするのですか?

 基本的に学校ではできないと考えたほうがいいですね。帰宅してからか、長期休業中にまとめてするか、休日にしています。夜、就寝前に読書時間は必ず1時間は確保すると決意してやります。クラブ活動は陸上部の顧問でしたから、土曜日や日曜日は試合が多かったです。審判の合間に喫茶店に行き、読書する時間を確保していました。

―先生の授業に対する発想や教材づくりはかなり独創的で、面白いものですが、そんな発想はどこからでてくるのですか?

 一言で言えば、経験と他の実践から学ぶことだと思います。若いころは一冊の本を読んでも、新聞をみても、面白いネタはせいぜい1本程度だったのですが、経験を積む中で、一冊の本から、教材へのいろんな料理の仕方ができるようになります。また、経験を積むと子どもは、どんなことに興味を持っているのか、どんな教材に意欲を示すかがわかるようになります。また、私は、書籍や雑誌、そしていろんな研究会に出かけ、他の実践から学ぶよう心掛けています。そこで他の実践者の発想に学びつつ、自分のものにしていくということを意識的に追及しています。

―先生が取り組まれている教材開発には、時間や意欲、かなりのエネルギーと言いますかパワーが必要だと思うのですが、その原動力は何ですか?

 一言でいえば「子どもの輝く顔がみたい」ってことです。授業が終わったときに「今日の授業は面白かったな」という声を聞きたいからです。さらに言えば「楽しくわかる授業」をする先生を好きにならなくても嫌いにはならないでしょう。これは、授業以外の学級経営や生徒指導にも生きてきます。つまり、子どもとの信頼関係を築く上で、不可欠だということです。

―授業での発言が減ってくる傾向にある中学生に、授業中に発言させる工夫にはどういったものがあるのでしょうか?

 中学1年生くらいは、けっこう発言しますが、徐々に発言しなくなりますね。それは思春期になると仕方ないことだとは思います。ただ工夫により活発に発言する授業は可能です。鉄則は、@教科書に書いてある内容などは発問しないことです。つまり、明らかにわかっていることを発問しても、最初は答えていても、バカらしくて答えなくなるからです。「答えたい!知りたい!」という発問を準備することが大切です。A授業方法の変化です。一問一答だけではなく、ペア学習、班討議、ディベート、フォトランゲージ、ロールプレーなど、さまざまな手法を用いて発言する機会を作ることです。B班競争も有効です。クイズなどはテンションをあげるために、得点集計をし、月ごとに賞状を与えたりしています。成績とは関係ありませんが、意欲を喚起します。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 授業中、面白くないと「寝る」「私語」「騒ぐ」「エスケープ」をくりかえす中学生。こんな中学生がクラスに数人いると、怠惰な雰囲気が蔓延し、教師に対する不信感もでてきます。
 こんな中学生にあって「すべての生徒が意欲的に参加する」というのは、あくまで“たてまえ”であって、現実は不可能だという声があります。それは、「学力低位層」「意欲のない」生徒に合した授業だと、満足しない生徒が少なからずでてくるからという理由からです。
 ただそれなら、“学力差”のない授業をすればいいのです。
 すべての生徒が、興味をもち、追求したい課題を設定し、生徒同士の“対話”により、いろいろ意見を言いながら、結論を共有する授業です。
そこで、また、同様に、それもまた“たてまえ”だという声。
 しかし、私は自信を持って言いたいのです。
 「教材」「発問」「討議課題」「授業方法」の改善により、そのことは可能だと!
 本書では、37年間の生徒との「格闘」(?)の中で培ってきた、その“極意”を紹介しました。読者の先生方のご実践の参考になれば、とても嬉しいです。

(構成:及川)

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