- 著者インタビュー
- 特別支援教育
3つの要素について、文部科学省(2004)の提言は、(1)連絡調整、(2)児童や保護者理解、(3)適切な教育実践としており、本書でもそのことについての具体的な内容をできるだけ噛み砕いて紹介するように心がけました。
さらに私は特別支援教育コーディネーターに求められる3つの要素として、ジェネラリストとしての人間性、教師としてのアセスメント力と実践力、人ごとを自分ごととして捉えられる感性を付け加えたいと思います。
教育には「子どもを見取る」という言い回しがありますが、まさにこの見取る力が「アセスメント」力です。アセスメントには「観察法」「面接法」「検査法」があります。「観察法」では「行動には意味がある」という視点から子どもの行動を適切に解釈することです。「面接法」はまさにカウンセリングで、「観察法」が客観的理解だとすると、「面接法」は共感です。すべての答えは子どもの中にあるといった視点です。「検査法」は「ジョハリの窓」で言うと、自分(子ども)も教師も知らない窓です。検査をすることで、その子の持っている情報処理とか認知処理とか、今まで気づかなかった情報を得ることができます。「だからできなかったんだ」「こうすれば、もっとうまくできるようになる」「こちらの指導法の方が、この子にはより適切」といった新しい情報が得られることになります。
本書では、このことについてLesson1と2で事例をとおして具体的に紹介しています。
特別支援教育コーディネーターがアセスメント力や指導力をつけることと、チームを組んで、校内支援体制を効果的に進めていく力量をつけることとは、ある意味、別の次元の問題です。まさに、宴会の幹事さんではないですが、全体をまとめていく力や状況を判断する力、チームを動かしていく力などなど、違った視点からの資質が求められます。「その資質とは何か」と問われても答えはありません。正解などないのです。それでは、どうしたらいいか…。考える一番の近道は、実際に、校内支援体制がうまくいったケースや失敗したケースなど、たくさんの事例に出会うことです。本書のLesson3では、先行事例や新聞の切り抜き、実際に私が体験した事例などをふんだんに紹介し、望ましい校内支援体制、望ましい特別支援教育コーディネーターとはどのようなものかについて、読者の皆様一人ひとりに考えていただこうと思っています。
医療では、難しい手に負えない病気が発見されることによって、新しい治療法がどんどん開発され、さらには、よりのぞしい医療技術や新しいクスリも開発されていきます。平成19年、すべての学校で特別支援教育が実施されることになり、学校受難、教師受難の時代が到来したなどと言われる先生もいます。しかし、ピンチはチャンス。一つ一つの難題を丁寧に解決していく姿勢、ニーズに応じた視点から教育を考えていく視点に立つことで、必ず、新しい教育の在り方が提案され、臨機応変に対応できる教師力が確実に身についていくものと信じています。特に、その中心となる特別支援教育コーディネーターの先生方には本当に大変なご苦労かと思いますが、先生方が特別に選ばれた存在であるということをパワーに変えて、今後とも、ご尽力、ご活躍されることを心から願っております。私たちも微力ながら、読者の皆様のお手伝いができればと考えておりますので、今後ともよろしくお願いします。