- はじめに
- 第1章 デキる特別支援教育コーディネーターを目指して
- 1 障害の3つのかべ
- 2 みんなちがってみんないい
- 3 タイプの違いによるあつれき
- 4 指導と支援
- 5 特別支援教育コーディネーターに求められる3つの要素
- 6 デキる特別支援教育コーディネーターを目指して
- 第2章 デキる特別支援教育コーディネーターになるための全30レッスン
- Lesson1「適切な子ども理解」 〜心理アセスメントの理解と活用〜
- 1 配慮を要する子どもたち:子どもたちはこんなところで困っています
- 2 発達障害とは:発達障害と言われる子どもたちの行動特性
- 3 子ども理解の視点:子どもを適切に理解するための多面的視点
- 4 発達の評価:子どもの発達をどのように測定するのか?
- 5 行動の評価:子どもの行動をどのように理解するのか?
- 6 知能の評価:知能検査は子ども理解にどのように役立つの?
- 7 知能検査の結果の解釈:知能検査の結果の読み取り 〜WISC−Wの場合〜
- 8 認知機能の評価:認知機能の偏りと子どもの行動の関係は?
- 9 認知機能の偏りと学習:認知機能の偏りと子どもの学習の関係は?
- 10 心理検査の解釈と活用:検査結果の解釈と活用の仕方は?
- Lesson2「適切な指導」 〜アセスメントに基づいた指導〜
- 1 強い能力の活用:長所活用型指導とは?
- 2 継次処理型指導と同時処理型指導:認知処理と指導方略@
- 3 強い認知処理様式を生かす:認知処理と指導方略A
- 4 事例1:計算につまずきのある小学生
- 5 事例2:平仮名の読みが苦手な小学生
- 6 事例3:漢字の読みが苦手な中学生
- 7 事例4:作文が苦手な小学生@「認知機能の偏りは?」
- 8 事例5:作文が苦手な小学生A「概念地図の活用」
- 9 ピンポイント指導とは:子どもの行動を解釈する
- 10 優れた実践者から学ぶ:個に応じた指導とは
- Lesson3「適切な支援」 〜校内支援体制の確立を目指して〜
- 1 苦悩する教師たち:これが現実? サポートが得られない中で…
- 2 校内支援体制を構築する上での諸課題@:学級の中で起こっている問題
- 3 校内支援体制を構築する上での諸課題A:担任や他の教員,管理職が感じている問題
- 4 校内支援体制を構築する上での諸課題B:学校システムやその他のシステムの問題
- 5 事例から学ぼう:1つのケースが学校全体に広がった!!
- 6 校内委員会の取り組み@:ケース検討会議を開いてみよう!!
- 7 校内委員会の取り組みA:情報整理は5W1H
- 8 特別支援教育コーディネーターってこんな人?:特別支援教育コーディネーターに求められる条件
- 9 まとめ1:デキる特別支援教育コーディネーターを目指して@
- 10 まとめ2:デキる特別支援教育コーディネーターを目指してA
- 第3章 ワークショップ事例集
- ワークショップ1 運動会に参加できなかった年長幼児Mくん
- ワークショップ2 授業中すぐ立ち歩いてしまうCくん
- ワークショップ3 板書を写すのが苦手なYさん
- 第4章 デキる特別支援教育コーディネーターになるためのQ&A
- Question1 特別支援教育コーディネーターに指名され戸惑っています。校内支援委員会ってどんなことをする組織ですか? 何から始めたらいいですか?
- Question2 特別支援教育コーディネーターとして校内委員会の推進を任されました。校内支援の流れや年間の推進計画について教えて下さい
- Question3 特別支援教育コーディネーターは「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成にどこまで関わるのでしょうか?
- Question4 発達障害や特別支援教育についての先生方の理解が得られず支援が進みません。特別支援教育コーディネーターとしてどのように対応すべきですか?
- Question5 通常学級での支援が難しい子どもについてケース検討会議を開きたいと考えています。ケース検討会議のポイントについて教えて下さい
- Question6 特別支援教育についての研修会を開きたいと考えています。実りある研修にするためのポイントについて教えて下さい
- Question7 子どもの主治医や支援を受けている関係機関と,連携をとりたいと考えています。連携のポイントと配慮事項を教えて下さい
- Question8 幼稚園や保育所からの情報が少なく,中学校への引き継ぎもうまくいきません。効果的な情報交流の方法を教えて下さい
- Question9 次年度入学予定の保護者から,学校見学と就学相談を求められました。就学相談のポイントや配慮事項等を教えて下さい
- Question10 保護者から,他の保護者や学級の子どもに対して障害告知をしたいとの相談がありました。どう対応すべきか教えて下さい
- Question11 保護者が子どもの状況を認めず,懇談会でトラブルを伝えた担任と決裂してしまいました。特別支援教育コーディネーターとしてできることは?
- Question12 保護者から担任の指導力についての苦情や過度の要求がありました。保護者に納得してもらえるような対応の仕方を教えて下さい
- 第5章 デキる特別支援教育コーディネーターからの事例報告集
- 1 小学校からの事例報告 特別支援を「身近で有効なもの」と実感してもらうために
- 2 中学校からの事例報告 中学校のいいところさがし 〜校内資源の発掘〜
- 3 高等学校からの事例報告 定時制高校の特別支援教育コーディネーターとして必要なこと
- 4 特別支援学校からの事例報告 特別支援学校が「つなぐ」特別支援教育
はじめに
「特別支援教育」が始まってすでに7年が経過しました。皆さんは,この特別支援教育がどのように進んでいるとお感じになっているでしょうか…?
その辺の実情について,ある教育委員会関係者は「もう5年待って下さい」とコメントしたそうです。その根拠を尋ねると,「5年経つと,特別支援教育を知らないまま管理職になる教員はいなくなる」との回答でした。なるほど,確かに,発達障害や特別支援教育を本当のところで理解するには,発達障害等の子どもたちと出会う担任時代の経験が不可欠でしょうし,ニーズに応じた教育とはどのようなものか身をもって体験しなければ,これからの学校運営に十分対応していくことは難しいかもしれません。しかし,今,私たちがしなければならないことは5年間指をくわえて待つことではなく,現在の特別支援教育では何ができていて何ができていないのか,今は何ができるのかをしっかり現状分析し,必要な対策に粛々と取り組んでいくことであると考えています。
私たちは,平成21年,発達障害の子どもたちが示す「困り感」に焦点を当て,彼らの思いや行動を解釈し,改善に向けた具体的な支援について「発達障害児へのピンポイント指導」という書籍にまとめて明治図書から出版しました。おかげ様で,読者の方々からたくさんの感想をいただきましたが,その中で「いかに上手に指導するかはわかるが,そのための子どもの見取りをどうやってするのか?」「指導方針が立ってもそれを実行するための環境整備が整っていない」「一所懸命やっても仲間からの理解や援助が得られない」など,指導がうまくいかない原因について様々なご指摘をいただきました。
このようなご意見をいただく中,特別支援教育を推進していくためのキーワードは,「精度の高いアセスメント」とそれに対応した「適切な指導」であり,学校全体がチームを組んで取り組むための「システムづくり」であると考えました。そして,そのキーパーソンとなるのが「特別支援教育コーディネーター」であり,彼らの力量アップが何よりも急務であると実感しました。
そこで,私たちは平成23年,「アセスメント」「指導」「校内支援体制」をパッケージとした3時間の研修プログラムを作成し,特別支援教育コーディネーターを中心とした研修会を全道各地を回って実施し,大変好評をいただきました。
本書はこの3時間の研修内容を再現する形で,読者の皆さんにも実際に本研修会に参加していただき,今日から“デキる特別支援教育コーディネーター”になっていただくことを目指して刊行しました。
尚,本書の刊行に当たっては,アイディアの少ない私たちに斬新かつ適切なアドバイスをしていただいた佐藤智恵さん,すでにご勇退されたとのことですが,長い間,本の出版という形で特別支援教育を牽引され,また,今まで私たちを陰ながら応援して下さった三橋由美子さんのこれまでのご支援に心から感謝いたします。また,「ピンポイント指導」に続き,今回もまた,子どもの生活の様子や学校風景を心優しく描いて下さった前幌西小学校長の菅原清貴先生にも心から感謝いたします。
平成25年12月 編著者 /小野寺 基史・青山 眞二・五十嵐 靖夫
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