- 著者インタビュー
- 特別支援教育
21世紀に入って、障害のある児童生徒への学校における対応は大きく変わりました。特に、LDやADHD,自閉症スペクトラムなどの、発達障害への理解は大きな進展をみせています。2002年、2014年の2回、文科省の全国実態調査でもこうした子どもたちへの理解と対応が、全国的に確実な広がりをみせていることが明かにされています。
また、さまざまな法的な整備も進み、インクルーシブ教育や合理的配慮といった言葉が日常化し、多くの支援を必要とする子どもたちへの気づきと具体的支援のニーズがさらに高まってきています。
「特別支援教育」は「特別」という言葉をつける必要のないほど、さまざまな子どもたちが求める、さまざまな支援に応える教育です。日々、学校で教育にあたっておられるすべての先生方、関係者、そして教職を目指している方などにとって、必要な知識を分かりやすく、正確にお伝えするものです。
また特別支援教育は保護者の方々とも理解を共有しなければなりません。保護者の方への正確な知識の伝達、あるいは共通理解のために、先生方だけでなく、保護者の方々にもぜひお読みいただきたいと思います。
これからの「特別支援教育」は、教育だけでなく、医療、心理、福祉の連動するなかで進めないと効果の期待できないケースが増えてきています。また、急速な展開のなかで、法的な整備も目を見張るばかりです。そうした動向に配慮し、今回の改訂では、関連領域、「法・制度・資格」「心理」「教育」「医学」「福祉」の領域に分け、またINDEXをつけることで、より使いやすく、利用しやすい工夫をしました。
実際に巡回相談などで学校を訪問しますと、先生方が「特別支援教育」をよく理解し、子どもたちと取り組んでおられます。そして、学校や教室場面では、さまざまな児童生徒や保護者の方と出会いもあります。
相談や支援は、基本的な理解を背景に、それぞれの子どもに応じた具体的な理解や指導へのアドバイスが求められます。時にはそのための手順も大切になります。ここでは、そうした場面で受けるさまざまな質問のなかから、基本となる考え方、共通度の高いご質問に絞り、Q&Aの形で構成しました。
私はこれまで使ってきた「障害」という言葉は、人を「障害のある人」と「ない人」に二分しやすく、その間で、必要な支援がうまく受けられない現実があったと思います。もしも「障害」ではなく、「個性」と考えるなら、連続性や重複性にも配慮した、適切な支援が受けられやすくなるのではないかと思います。
多くの子どもたちにとって、必要な支援が受けられやすく、しかもその支援が確実に効果を上げるという事実を積み上げることが、これから「支援教育」の根幹ではないでしょうか。先生と保護者の方々は、子どもたちの将来の「自立と社会参加」のために、今、何をしなければならないかを一緒に考えることが何よりも大切だと思います。