著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
スマホ時代に身に付けたい「手書き力」
長崎大学教育学部教授鈴木 慶子
2014/3/3 掲載
 今回は著者を代表して鈴木慶子先生に、新刊『1回10分で積み上げる!「書く力」育成ワークシート 中学校編』について伺いました。

鈴木 慶子すずき けいこ

長崎大学教育学部 教授/書育推進協議会 専務理事。
千葉大学大学院教育学研究科修了。長崎大学に着任して、今年の4月で20年目。
ただ今、6月21日に開催する「日本国語教育学会第39回西日本集会「ひとりを育てる、集団を鍛える、言語活動の創造」(長崎大会)」を準備中。
〈著書〉
『書写スキルで国語力をアップする!新授業モデル 小学校編』
『同 中学校編』(何れも共編著、2011、明治図書)他

―パソコンやスマホにより「書く」より「打つ」ことの方が日常的になっていますが、手で書く作業の重要性はどんなところにあるでしょうか。特に中学生にとっての意味を教えて頂けますか?

 まずは、有名なエピソードを紹介します。
19世紀の哲学者ニーチェは、タイプライターを使い始めた時、使わなかった時と比べて文体が変わったことに気がつき、「執筆道具は思考を規定する」と言ったそうです。
 手書きすることは、綿密で深い思考に適しています。それを知的基盤にしておくことが肝心です。
 中学生は、体力も知力も柔らかで伸び盛り。綿密で深い思考の訓練にぴったりです。というのは、現代人は、パソコン以前には、戻れなくなっています。だから、若い時期に思考の訓練をしていない現代人は、浅みにはまって、脱出できません。浅みにはまっていることさえ、気づきません。

―本書に収録されているワークシートを見ると、高校野球の選手宣誓文や、NHK全国学校音楽コンクールの課題曲の歌詞など、様々なものが教材として取り上げられていますね。どのような視点で教材の選択をしましたか?

 感動する言葉を集めました。よい言葉をたくさん知っていると、よい人生が送れます。知っているだけでなくて、それを自分はどう解釈するのかが大事です。さらに、解釈を友人と交流することが、もっと大事です。解釈が深まり広がるからです。
 そういうことがしやすい教材を選定しました。

―本書は、「モジュール学習」というスタイルで学ぶことができるとうたっていますね。「モジュール学習」とは何でしょうか。またそのメリットも教えて頂けますか?

 10分間程度の短い時間を一まとまり(=モジュール)として学習を行うスタイルです。短時間に集中したほうが効果の上がりやすい計算練習や漢字の書き取り練習などの分野で、既に行われてきました。
 「書く」学習は、他の言語活動に比較して負担が大きいので、10分間程度の集中学習で習慣化することによって、実力になります。
  

―本書は、ワークシートが56点収録されていますが、効果的な活用方法を教えてください。

 魅力を感じる教材から、ランダムにどうぞ。
 素材文に魅力を感じてもよいし、書き文字に魅力を感じてもよいです。
 同じ教材を何度もしてもよいです。その時は、記録をとっておくと、振り返りが楽しみになります。

―最後に、読者の先生方へ向け、ぜひメッセージをお願いします。

 手術で声を失った方が肉声で語ることの感激を語っていらっしゃいました。
 肉筆で考えること、肉筆で伝えることの深みと価値を、中学生に体験させましょう。

(構成:木村)
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