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ユニバーサルデザインな授業とはすべての子どもが「わかる」「できる」を目指した授業のことです。これを実現するためには、発達障害のある子どもだけでなく、理解が早い子ども、ゆっくりの子どもも含め、一人ひとりの学び方の違いに応じて学び方を選べる授業づくりをすることが大切です。
説明を聞いた方が理解しやすい子ども、図示してもらった方が理解しやすい子ども、実際物を操作したり体を動かしたりした方が理解しやすい子どもなど、子どもの学び方は千差万別なのです。
本書では、マルチ知能の8つの力とやる・き・ちゅ(やる気、記憶、注意)の3つの力の視点で学び方を分類し、授業内容を工夫することを提案しています。
マルチ知能(multiple intelligences)というのは、「言語的知能」、「論理数学的知能」、「空間的知能」、「身体運動的知能」、「音楽的知能」、「対人的知能」、「内省的知能」、「博物的知能」の8つのことで、アメリカの心理学者ハワード・ガードナー博士が提唱したものです。知能検査で主に測定される言語的能力や論理数学的知能だけでなく、人間には他にも様々な能力があると主張し、人間の能力を幅広く捉えます。
なお、マルチ知能は多重知能、多重知性、多元的知能、マルチ能力、マルティプル・インテリジェンスと翻訳されたり、あるいは英語の頭文字をとってMIと記されたりもしていますが、すべて同じもののことです。
う〜ん。どれもおすすめのアイデアなので困りましたが…。では、様々なマルチ知能ややる・き・ちゅの力が活用されているということで、「マルチなまとめ・発表」を紹介します。社会科で調べたことを年表(論理数学的知能、注意、記憶)にしたり、紙芝居(言語的知能、空間的知能、身体運動的知能、対人的知能)や劇(言語的知能、空間的知能、対人的知能、記憶)にしたりした子どもの様子が紹介されています。
注:( )内は活用されるマルチ知能等
さらに、自分たちで発表の方法を選べるということが、「やる気」を引き出す大きなしかけになっています。
また、フラッシュカードのアイデアは既に先生方も実践しているものかもしれませんが、マルチ知能とやる・き・ちゅの視点から見直してみると、新たな気づきが得られると思います。
発達障害のある子どもたちの中には、読むのは苦手でもイラストで示してもらうとわかる、あるいは書くのは苦手でも、ちゃんと考えていることがあって、形式張らない話し言葉やジェスチャーで補えば自分の考えを伝えられる子どももいます。マルチ知能の8つとやる・き・ちゅの3つ視点を持つと、その子にあった学び方支援のアイデアがどんどん湧いてきます。本書が、子どもの中に眠っているたくさんの可能性を引き出す手がかりとなれば幸いです。