著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
緻密に練られた授業展開で授業がアクティブになる
横浜市立上の宮中学校主幹教諭北村 明裕
2015/5/25 掲載
 今回は北村明裕先生に、新刊『子ども熱中! 中学社会「アクティブ・ラーニング」授業モデル』について伺いました。

北村 明裕きたむら あきひろ

横浜市立上の宮中学校主幹教諭。全国教室ディベート連盟論題検討委員。よのなか科マスターティーチャー。横浜都筑授業づくり研究会代表。著書に『子ども熱中!中学社会「活用・探究力」書き込み習得ワーク47』(明治図書)、『学校行事・部活動で楽しむディベート実践ガイド』(学事出版)などがある。

―本書の書名にもなっている「アクティブ・ラーニング」は、一方的に知識を教える「講義型」ではなく、学習者自らが課題を解決したりプレゼンテーションをしたりする「能動型学習」と言われます。小・中学校の授業の中では、その基礎となる活動がすでに展開されているとも思いますが、先生がこれまで取り組まれてきた「生徒が主体的に考え、活動する授業」にはどんなことが大切でしょうか?

 教師の指示のもと、自由に何でも発言できる雰囲気づくりを大切にしています。課題をあたえた後、数分間席を離れて自由にディスカッションする時間をとることもあります。1年生のころから、「私は〇〇だと思います。なぜかというと…」というように主張に根拠を伴わせた発表方法を教えるとプレゼンテーションが上手になります。

―本書では子ども達がアクティブに動く授業プランが豊富に提案されていますが、授業中の教師と生徒の具体的なやり取りが、会話形式でリアルに再現されています。このような形をとられたねらいについて教えて下さい。

 忙しい学校現場で働いている読者の先生方が、授業の様子をイメージしやすくするためです。紙面の都合で生徒とのやりとりを省いた部分もありますが、生徒の興味を引き出し、考えさせるような授業展開を緻密に考えたので、教師の発言を順序通りに進めていけば、経験の浅い先生でもアクティブな授業が再現できるはずです。

―学習指導要領の改訂から数年が経ちますが、先生方からよく聞かれる悩みの一つが地理における「動態地誌」的なアプローチです。「複数の事象を有機的に関連づけ」ながら地域的特徴を理解する学習には、どのようなことが大切でしょうか?

 地域的特色が、なぜみられるようになったのかを教師がしっかりと調べておくことが大切です。地域固有の現象には、その背景に自然環境や、歴史的背景、他地域との結び付き等の要因が関係しています。これらを教師が理解したうえで、生徒が興味をもつような問いや作業、そしてそれをどう組み合わせるのか、順序を考えます。

―本書には、リンクマップを使った討論の授業や、パワーポイントを使ったクイズ大会、スマートフォンを使った楽曲を聞いての授業、すごろくゲームなど、バラエティに富んだ授業プランが収録されています。どれも「学習内容をしっかりとおさえながらも魅力的」な授業ばかりですが、このような授業づくりで大切にされていること・ポイントは何でしょうか?

 ○○を伝えたい、○○について考えさせたい、○○に関して興味をもたせたい。等、「その授業のねらいは何か」を教師が明確にもつことが大切です。これをふまえたうえで、ねらいを実現するためにはどんな学習方法をとったらよいか考えます。1時間の授業だけでなく、単元全体を見通して、ねらいと学習方法を考えることも重要です。

―「正解のない問題について考えさせる」討論のような授業は、うまくナビゲートしないと噛み合わず本質からずれてしまったり、散漫で深まらずに終わってしまう場合もありますが、議論を深め、成功に導くポイントがあれば教えて下さい。

 教師が何について意見を言わせたいのか、論点を絞り、生徒に明確に伝えることが大切です。そのためには、教師自身が論題についての予備知識を十分に身につけておく必要があります。議論の展開を事前に予想しておき、脱線したらさりげなく修正します。いきなり討論させるのではなく、論題について興味をもたせておくことも重要です。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 本書は、どこにでもある、ふつうの公立中学校の教師が日々行ってきた授業実践をまとめたものです。忙しい仕事に追われながらも、「少しでも生徒の興味をひきだし、目を輝かせるような授業を行いたい」と考えている全国の仲間の先生方に使っていただければ、これにまさる喜びはありません。

(構成:及川)

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