現行の学習指導要領では、小学6年生算数の学習内容に中学1年生の数学で扱っていた「文字式」が組み込まれ、「数学」先行の枠組みに変化しました。確かに単純な文章題の場合は方程式を利用した方が速く解けて便利ではあります。が、小学校の「算数」が「数学」への導入科目として位置づけられるのではなく、長い成長過程の中で「算数」ならではの特性を活かした指導をすることが大切だと考えます。
塾と学校とでは学習する「算数」の内容やレベルに多少の違いがありますが、子どもにとっては塾でも学校でも学習する「算数」は同じです。この「算数」の指導は「数学」のように対象を抽象化して処理するスピードを重視するのではなくて、解法の糸口をさぐる過程を重視して解き進めることがポイントです。本書から、
- 算数的解法のスキル
- 勘やヒラメキから生じる子どもらしい柔軟な発想の引き出し方
- 子どもの理解度のばらつきに応じた指導上の工夫
を参考にして活用してほしいと思います。
条件のわかりやすい基本問題に対する正答率は高く頼もしく感じましたが、条件が複雑な応用問題に関しては正答率が50%を切ったものもありました。その誤答分析で見えてきたものが大きく2つあります。1つ目は科目を超えた生活習慣、具体的には、
- よく読まない
- よく考えない
- 見た目で判断する
という稚拙さからくる3つの子どもの習性が誤答の原因となっていること。2つ目は算数の重要分野「割合」に関しての理解度が低いということです。
算数と数学の違いは大きく3つあります。
- 算数と数学は発想が違う
- 算数的解法の式にはストーリーがある
- 算数には感覚的なヒラメキが求められる
つまり算数は数学よりも右脳思考の強い科目です。人間は幼い時は右脳中心で考え、成人になる過程において左脳中心となり、高齢になるとまた逆転すると言われています。中学生になってから学習する数学的な発想を早い時期に習得させるよりも、小学生のうちは右脳的思考力に磨きをかけるべきだと考えるからです。小学生時代に思考力の豊かさ、柔軟さ、そして勘の鋭さ、思いもよらない奇想天外な発想に磨きをかけることが、成長過程の中でいかに大切で素晴らしいことであるかを強く感じています。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉の通りに、子どもたちが目を輝かせて取り組んでくれる環境を作ることです。紹介している100の工夫(スキルやポイント)は様々な場面を想定した事例ですが、中には相反する内容もあります。
- 心(子どもの気持ち)
- 技(指導上のスキル)
- 体(算数の科目の特性)
の3つの側面を意識してケースバイケースで力点のバランスを考え、明るく元気で前向きな魂のキャッチボールをすることを心がけることが大切だと思います。
思いもよらない子どもの発想には知識にとらわれない無限の広がりを感じます。既成概念にとらわれない子どもたちのすばらしい解法は、小学生の年齢と算数という科目のコラボと言えます。魅力ある「算数」、柔軟な思考力を持ち合わせる「子ども」、これらの媒体とも言える「授業」、この3つの要素を生かせるかどうかは教師にゆだねられています。
本書がお役に立ち、一人でも多くの子どもがやる気になって授業に臨むことを願っています。明るく元気で前向きに!子どもとともに成長し続けましょう!
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- 新米教師
- 2015/8/31 11:11:35
算数に関してはかなりレベルの高い子どもを指導する場合にあてはまる事例が多いのですが、全体指導の指導スキルは科目を超えて大変役立つ内容です。改めて足元を確認できる指導書です。