- 著者インタビュー
- 特別支援教育
学校って、いいことばかりではないけれど、最後はやっぱり楽しいところであってほしいと思います。僕は、そう思ってこの仕事をしてきましたし、僕が出会ってきた先生も、子供たちも、保護者の方もみんなそう思っていると感じました。子供の頃を笑顔で過ごすことができれば、その原風景は、これからの子供たちの大きな力になってくれるのではないかなとも思います。
でも、実際の教室ではなかなかそうはいかないです。僕自身も笑顔でいられないときがありましたし、僕が携わってきた子供たちに笑顔でいさせてあげられないこともありました。今、僕のまわりにも、不安や悩みで辛い思いをしている先生がたくさんいます。
通常の学級の担任や特別支援教育コーディネーターを務めているわけですが、僕のまわりにいる先生や子どもたち、保護者の方が笑顔で小学校生活を送ってほしいということを一番に願っています。
僕は、子供たちにも、まわりの先生たちにも恵まれてきたので、苦労することもあったけど、いつもクラスの子や、まわりの先生に励まされていました。今でも不安になることは結構ありますが、小学校の担任をやって20年たった今では、これまで受け持った子供たちと過ごした日々や子供たちの姿が、大きな支えになっています。
大学生になったかつての教え子が同窓会の後、メールをくれて、その中にこんな文がありました。「先生が必死で私たちに向き合ってくださった姿が、私の胸の中にしっかりと刻み込まれています」必死に向き合うことは、経験年数に関係なくできることです。本書のP.30にも書きましたが、不安を感じたり、心配なことがあったりしたとき、最後は、いつもこの言葉に立ち戻ることにしています。
特別支援関係の本のタイトルを見渡していると、「気になる子」という言葉をよく見かけます。確かに教室の中には「気になる子」がいます。でもそんな「気になる子」は、いわゆる特別支援に関している子ばかりではありません。
それに「気になる子」のまわりにいて、特に担任としては、気にならないのだけれど、実は本人は、困っている子もいます。それから、そんなに困っていないのだけれど、本人は気にしてほしいと思っている子もいるはずです。
特別支援の視点で教室を見ると、気になる子ばかりに焦点があたってしまうことが少なくありません。気になる子どもたちは苦しんでいる子であることも多いから、支援の手がたくさん差し伸べられることがあります。時として、学校中の何人もの大人にかかわってもらえることもあります。もちろんそれを否定するつもりはありません。そういう支援は必要なことです。
でも、そのまわりで、誰の手も煩わせずにがんばっている子どもたちのことも、担任としてはやっぱり気にしていたいと思います。
ただ実際の教室で、30人と向き合っていると、つい目がいかない子がどうしても出てきてしまいます。最近もそんな子の存在に気が付き、反省させられました。まだまだです。
子供たちには笑顔であってほしいです。でも、そのためにはまず、先生が笑顔でなければいけない。だから、この本では、最初の章に先生を笑顔にする心構えを取り上げました。
学校は楽しいところです。この仕事は、幸せな仕事です。不安を抱えている先生が僕の周りにもたくさんいますが、それを笑顔に変えられる手立ては必ずあります。本書をその手掛かりにしてもらえるとうれしいです。
悩んだり、心配したりすることのスペシャリストとして、書かせてもらった本です(笑)。その分、不安を抱えている先生や子供たち、保護者の方の力になれるのではないかと思っています。
夏休みが終わり、また子供たちと出会うことに不安を感じている先生に是非読んでほしいです。また近くにそういう先生がいましたら、是非お勧めください。