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実験から得られた結果(事実)と考察(結論と根拠)を分けて書かせることを徹底しています。結果と考察を混同している生徒が少なくないからです。また、考察で結論を述べる場合は、実験の目的を意識させ、実験の目的と考察の結論とが対応していることに注目させます。
一方、結果と考察以外の生徒が気づいたことの中に有益な情報が含まれる場合もあります。ですから、結果と考察以外にも様々な情報を発信できる記述スペースを設けることも大切です。
重要な用語を暗記していても、適切に使用することができない生徒が少なくありません。キーワードをまとめる場合は、その内容、定義を具体的に示し、正確な理解をはかりたいものです。中和と中性、放射能と放射線など、生徒が混同する言葉はたくさんあります。
また、関連する複数のキーワードがある場合は、その関係性を示す必要があります。例えば、火成岩、火山岩、深成岩、花こう岩、安山岩はいずれも火山の岩石にかかわる名称ですが、それぞれの関係は単純に並立するものではないので、関係性を構造化して伝えたいところです。
図示するものが、構造や原理の理解をはかることを主たる目的とする場合は、実際の自然現象や生物の様子から余計な要素を取り払い、いかに必要な要素を残すかという点に注意し、元のイメージをこわさない範囲で模式化します。
一方、ある程度リアルな図が欲しいときもあります。その場合は、元になる図を拡大コピーをして黒板に示すとともに、生徒にも補助資料として図を配布し、ノートに貼らせています。観察などにおける精密なスケッチは大切ですが、板書の時間をできるだけ節約したいからです。
時間が迫ってくると、つい一部の生徒の模範的な意見を集め、それを総括したものを教師が板書し、生徒がノートに写す、というまとめになりがちです。
ですから、まずはじっくりと生徒に考えさせるために、個々の生徒が自分の考えをノートに書く時間を保障します(板書でも、自分の考えを書くスペースや、グループで相談した考えを書くスペースを示しておきます)。
そのうえで、重要な用語や語句に( )を用いてあえて空欄にしたり、時には板書事項を教師が口頭で説明し、それを聞き取ってノートに書かせるなどの工夫をするとよいでしょう。
本書では、板書を通して、授業づくりにおいて大切にしたいことや工夫したいことにも踏み込んでみました。
教科の学習内容は学習指導要領による制約を受けます。それでも、どのように導入し、いかに問いをもたせ、どのように実験を行い、どのように思考させるかなど、教師の裁量の幅は決して小さくはありません。
授業づくりは創造的な営みであり、それがやりがいにもつながります。多くの授業実践に触れながら、よりよい授業づくりを繰り返すことが大切だと考えます。この本がそうした一助になれば幸いです。