- はじめに
- 1章 毎日の理科授業の板書を考える
- 1 理科授業と板書
- @理科の特徴
- A理科授業の展開と板書
- 2 理科授業の板書12の鉄則
- 鉄則1 板書がノートに再現される姿を想定し,板書計画を立てる
- 鉄則2 学習の履歴がわかるような構成にする
- 鉄則3 課題に対する予想のスペースを設ける
- 鉄則4 観察,実験の方法は図を併用して簡潔に書く
- 鉄則5 観察,実験の結果のまとめ方を示す
- 鉄則6 考察の書き方を示す
- 鉄則7 観察,実験をまとめたうえで,一般化した内容をまとめる
- 鉄則8 学んだことを活用する場面を示す
- 鉄則9 複数の事例を示し,学んだことを深めさせる
- 鉄則10 キーワードの意味を明確にし,互いの関係を構造化する
- 鉄則11 グラフや複雑な図は,補助的な用紙を提供する
- 鉄則12 穴うめで,丸写しを防止する
- 2章 授業を変える板書の工夫45
- 1年
- 1 複数のものの比較から,共通点と相違点を実感させる
- (生物/花のつくりと働き)
- 2 植物の働きについて分析し,解釈させる
- (生物/葉・茎・根のつくりと働き)
- 3 植物のからだのつくりと働きを総合的に理解させる
- (生物/葉・茎・根のつくりと働き)
- 4 器具の構造と操作の意味を理解させる
- (化学/身の回りの物質とその性質)
- 5 生徒自身に実験を計画させる
- (化学/気体の発生と性質)
- 6 粒子モデルの意義を実感させる
- (化学/物質の溶解)
- 7 グラフを読み取る力を身につけさせる
- (化学/溶解度と再結晶)
- 8 粒子のモデルを活用して説明させる
- (化学/状態変化と熱)
- 9 光の屈折について,身近な現象から仮説を立てさせる
- (物理/光の反射・屈折)
- 10 作図の意味を本質的に理解させる
- (物理/凸レンズの働き)
- 11 定性実験から定量実験へとステップを踏む
- (物理/音の性質)
- 12 グラフ作成の基本を身につけさせる
- (物理/力の働き)
- 13 観察に必要な知識と視点を与える
- (地学/火山活動と火成岩)
- 14 プレートと関連させながら,学んだことを統合させる
- (地学/地震の伝わり方と地球内部の働き)
- 15 モデル実験を行いながら,風化から堆積までの過程をまとめる
- (地学/地層の重なりと過去の様子)
- [コラム]指導案が先か,板書計画が先か
- 2年
- 16 化学反応式をモデルと関連させて理解させる
- (化学/化合)
- 17 比較させることで,別の物質であることを見いださせる
- (化学/化合)
- 18 実生活に関連する話題を投げかけ,実験の目的を明確にする
- (化学/酸化と還元)
- 19 見えない気体の存在を実感させ,考察に生かす
- (化学/酸化と還元)
- 20 複数の実験から考えられることをまとめる
- (化学/化学変化と質量の保存)
- 21 複数のものの観察から,共通点と相違点に気づかせる
- (生物/生物と細胞)
- 22 対照実験の意義を理解させる
- (生物/生命を維持する働き)
- 23 個々の学習内容を最後にまとめる
- (生物/脊椎動物の仲間)
- 24 実験結果から規則性を見つけさせる
- (物理/回路と電流・電圧)
- 25 既習事項を活用して新たな視点を発見させる
- (物理/電気とそのエネルギー)
- 26 既習の法則を適用してものづくりに生かす
- (物理/磁界中の電流が受ける力)
- 27 既習事項を活用して機器を発明させる
- (物理/電磁誘導と発電)
- 28 実験結果と資料を基に,空気中の水蒸気量を推定させる
- (地学/霧や雲の発生)
- 29 要因を明らかにし,筋道を立てて説明させる
- (地学/霧や雲の発生)
- 30 データの比較から規則性を見つけさせる
- (地学/日本の天気の特徴)
- [コラム]板書の見え方と消すタイミング
- 3年
- 31 電子の授受を実感させ,電池のしくみを理解させる
- (化学/化学変化と電池)
- 32 既習事項から予想し,検証させる
- (化学/酸・アルカリ)
- 33 イオン式を用いて中和を理解させる
- (化学/中和と塩)
- 34 イオンのモデルを用いて,中和反応の量的関係を考えさせる
- (化学/中和と塩)
- 35 要点を押さえ,後の学習の理解につなげる
- (生物/生物の殖え方)
- 36 動物と植物の生殖を対比し,共通点と相違点を認識させる
- (生物/生物の殖え方)
- 37 規則性に気づかせ,モデル実験を通して理解を深めさせる
- (生物/遺伝の規則性と遺伝子)
- 38 多様な結果から共通する法則を発見させる
- (物理/力のつり合い)
- 39 記録タイマーの演示を工夫し,何を測定しているのかを理解させる
- (物理/力と運動)
- 40 実験を通して,仕事の定義を体感的に理解させる
- (物理/仕事とエネルギー)
- 41 仕事とエネルギーの関係を基に,実験の意味を理解させる
- (物理/仕事とエネルギー)
- 42 演示実験と板書を関連づけ,実感を伴った理解をはかる
- (物理/力学的エネルギーの保存)
- 43 四季が生じる理由をモデル実験を通して考えさせる
- (地学/年周運動と公転)
- 44 モデル実験を通して,金星の見え方を考えさせる
- (地学/惑星と恒星)
- 45 多面的に見て,自分の考えを述べる力を育てる
- (エネルギー資源)
- [コラム]この漢字はこんな感じ?
はじめに
部屋の前面に黒板があり,多数のいすが整然と並んでいる様子は,私たちが描く教室の原風景です。世代を問わず,多くの人が黒板と深くかかわりながら,学校生活を送ってきたことと思います。
この本では,その黒板に書かれる「板書」にスポットを当てました。
黒板は,もともとフランス人によってアメリカに伝わったと言われています。日本では,明治時代に黒板の原点とも言える「塗板」が誕生し,主に寺子屋などで使用されましたが,「塗板」は黒板よりも掲示板に近く,小さなものでした。そして,明治5年の学制開始と同時に,アメリカから「ブラックボード」が持ち込まれました。日本語の黒板は,ブラックボードをそのまま翻訳したものであると言われています。その後,明治10年ごろには全国に広がりました。
昭和29年には黒板JIS規格が制定され,塗面が黒から現在使用されているようなグリーンに変わりました。見やすさを考慮したのでしょう。厳密には「黒板」ではなくなってしまいましたが,新しいものが生みだされ,古いものが姿を消していく栄枯盛衰の世の中で,実に百数十年もの長きにわたって教室の中央に鎮座し続けているというのは,驚くべきことです。それだけ,授業の中で板書が重要な役割を果たしてきたとも言えるでしょう。
一方,学校で行われる授業に対する考え方は時代によって大きく変化しており,それにともなって,黒板の役割も変化してきました。
古くは,黒板の方を向いた生徒に対して教師が講義し,要点を黒板にまとめる,というタイプの授業が主流でしたが,近年は,一方向的な講義形式の授業だけでなく,生徒の能動的な学習を取り入れ,多様な資質能力の育成を図ることが重視されるようになりました。
板書についても,当初は主に学習したことをまとめる場と認識されていましたが,時代とともに,その役割は多様化しています。理科の授業に関係するところで思いつくままにあげてみても,導入課題の提示,実験方法の提示,実験結果と考察の視点や枠組みの提示,学んだことの要点のまとめ,法則や原理を適用する課題の提示,生徒相互の考え方の共有,モデルの提示,演示実験の場…などなど,様々な役割が考えられます。
このようにあげてみると,板書について考えることは,授業の構成について考え,何が本質的に大切であるのかを吟味することにつながる,ということに気づきます。今回,理科授業の板書というテーマで執筆する機会をいただきましたが,改めて自分自身の授業づくりを見直す機会になりました。
この本が,先生方の板書づくり,ひいては授業づくりの一助となりますことを願っています。
2015年7月 /宮内 卓也
指導書だけでは子どもに考えさせるポイントなどが掴めず、ただ教えるだけの授業になってしまう…と悩んでいたときにこの本と出会いました。
板書がテーマですが、課題の提示、子どもにさせたい活動や思考・表現、理科のそれぞれの単元ならではの板書の工夫や注意点など、授業に取り入れたい要素が充実していてとても参考になっています。
欲を言えば扱う単元が更に増えるとありがたいです。