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教師であれば、一人でも多くの子どもから「わかった!」「できた!」という声を聞きたいという思いで授業をしているはずです。しかし、型どおりに進んでいくような授業では、そういった声を聞くことは難しいでしょう。
そこで、子どもたちの反応の中から、一番手の発表にふさわしい反応を取り上げ、その反応を基にして考えをつなぎ、練り上げていきます。そして、ここで止まってはいけません。その授業のポイントとなるところを子どもたちに再度問い返し、理解を深めるのです。
このような一連のしかけがあってこそ、より多くの子どもから「わかった!」「できた!」という声を聞くことができると考えています。
私は、子どもの考えをおおよそ、「つまずき、未完成のもの」「素朴な考えのもの(解決できているが数理にまでは至っていないもの)」「数理に直結しているもの」の3つに分けてとらえるようにしています。授業前には、子どもが問題に対してどんな考えをもつのか、反応を予想しておきます。
私の授業では、「素朴な考えのもの」からスタートすることが多いように思います。「つまずき、未完成のもの」から取り上げるのは、つまずきを取り上げた方がその時間の目標を達成するのにより効果的であると判断したときです。「数理に直結しているもの」から取り上げる場合は、大半の子どもが数理に直結した考え、見通しをもてているときです。
もちろん、「一番手」である発表者を鍛えることは必要です。この点に関しては多くの先生方がよく取り組んでおられます。
でも、子どもの考えをうまくつないでいくためには、聞き手の子どもの聞き方の技術やかかわり方の技術も重要になってきます。つまり、「二番手」を鍛えることが必要なのです。
聞き方の技術を向上させるためには、絶えず意識を働かせ、自分の考えと比べながら聞かせるようにします。また、かかわり方の技術については、「私も同じ考えです」「もう一度説明してください」といった「つなぎの言葉」を意識的に使わせるようにします。
まずは、「授業開始30分後」などと自分の中で目安の時間を決め、「問い返し」の発問を投げかけてみてはどうでしょうか。私は「問い返し」の発問を投げかける際、班で話し合うように促すことが多いのですが、子どもたちが話し合いに慣れていなければ、もう少し小刻みに「問い返し」の場を設けることです。
また、どうしても「問い返し」の場を設定できない方は、授業記録をとり、自分の授業構成のクセを分析してみてください。続けていると、問題提示の前段の話が長い、自力解決の時間が必要以上に長い…など、「問い返し」の場を設定できない原因が見えてくるはずです。
前書『算数学び合い授業スタートブック』には本当に大きな反響があり、今なお多くの先生方の手にとっていただいていることに感謝します。今回の『算数学び合い授業ステップアップブック』はその続編であり、学校現場の先生方の貴重な生の声を大切にしました。
まずは目次だけでも目を通してみてください。必ずや学び合い授業を実践するうえで課題となるところが目に止まると思います。前書同様よろしくお願いいたします。