著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「取り上げ・つなぎ・問い返す」で、あなたも学び合いマスター!
元熊本市立田迎西小学校長(初代)宮本 博規
2016/2/29 掲載
 今回は宮本博規先生に、新刊『算数学び合い授業ステップアップブック』について伺いました。

宮本 博規みやもと ひろき

1958年熊本県生まれ。
元熊本市立田迎西小学校長(初代)。
熊本大学教育学部数学科を卒業後、1982年熊本県菊池市立重味小学校に教諭として着任。その後、熊本市立小学校教諭、教頭、熊本市教育センター指導主事、所長補佐を経験。
全国算数授業研究会理事等を務め、熊本県では12年間に渡り熊本県と熊本市の算数教育研究会の事務局長を務める。
熊本市立壺川小学校教諭時代には、NHK教育番組「わかる算数4年生」「わかる算数5年生」「わくわく授業〜わたしの教え方〜」等に出演。

―本書は、前作『算数学び合い授業スタートブック』から一歩踏み込み、学び合い授業の技術的側面を掘り下げた『ステップアップブック』です。特に「取り上げ・つなぎ・問い返す」という教師のしかけに焦点を当てています。宮本先生が、この「取り上げ・つなぎ・問い返す」を大切にされているのはなぜですか。

 教師であれば、一人でも多くの子どもから「わかった!」「できた!」という声を聞きたいという思いで授業をしているはずです。しかし、型どおりに進んでいくような授業では、そういった声を聞くことは難しいでしょう。
 そこで、子どもたちの反応の中から、一番手の発表にふさわしい反応を取り上げ、その反応を基にして考えをつなぎ、練り上げていきます。そして、ここで止まってはいけません。その授業のポイントとなるところを子どもたちに再度問い返し、理解を深めるのです。
 このような一連のしかけがあってこそ、より多くの子どもから「わかった!」「できた!」という声を聞くことができると考えています。

―子どもの考えを「取り上げる」といっても、複数ある子どもの考えの中からどれを取り上げればよいのかで迷ってしまう先生も多いと思います。宮本先生は、子どもの考えをどのように選び出しているのでしょうか。

 私は、子どもの考えをおおよそ、「つまずき、未完成のもの」「素朴な考えのもの(解決できているが数理にまでは至っていないもの)」「数理に直結しているもの」の3つに分けてとらえるようにしています。授業前には、子どもが問題に対してどんな考えをもつのか、反応を予想しておきます。
 私の授業では、「素朴な考えのもの」からスタートすることが多いように思います。「つまずき、未完成のもの」から取り上げるのは、つまずきを取り上げた方がその時間の目標を達成するのにより効果的であると判断したときです。「数理に直結しているもの」から取り上げる場合は、大半の子どもが数理に直結した考え、見通しをもてているときです。

―本書では、子どもの考えを「つなぐ」ポイントの1つとして、「二番手」を鍛えることをあげられていますが、それはなぜでしょうか。また、そのためにはどのような指導をするとよいのでしょうか。

 もちろん、「一番手」である発表者を鍛えることは必要です。この点に関しては多くの先生方がよく取り組んでおられます。
 でも、子どもの考えをうまくつないでいくためには、聞き手の子どもの聞き方の技術やかかわり方の技術も重要になってきます。つまり、「二番手」を鍛えることが必要なのです。
 聞き方の技術を向上させるためには、絶えず意識を働かせ、自分の考えと比べながら聞かせるようにします。また、かかわり方の技術については、「私も同じ考えです」「もう一度説明してください」といった「つなぎの言葉」を意識的に使わせるようにします。

―話し合いの流れを壊すのをためらって「問い返す」タイミングを逃してしまったり、そもそも授業計画の中に問い返しの場をどう設定すればよいのかがわからないという先生も多いと思います。問い返しの場を意図的に設定するには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。

 まずは、「授業開始30分後」などと自分の中で目安の時間を決め、「問い返し」の発問を投げかけてみてはどうでしょうか。私は「問い返し」の発問を投げかける際、班で話し合うように促すことが多いのですが、子どもたちが話し合いに慣れていなければ、もう少し小刻みに「問い返し」の場を設けることです。
 また、どうしても「問い返し」の場を設定できない方は、授業記録をとり、自分の授業構成のクセを分析してみてください。続けていると、問題提示の前段の話が長い、自力解決の時間が必要以上に長い…など、「問い返し」の場を設定できない原因が見えてくるはずです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 前書『算数学び合い授業スタートブック』には本当に大きな反響があり、今なお多くの先生方の手にとっていただいていることに感謝します。今回の『算数学び合い授業ステップアップブック』はその続編であり、学校現場の先生方の貴重な生の声を大切にしました。
 まずは目次だけでも目を通してみてください。必ずや学び合い授業を実践するうえで課題となるところが目に止まると思います。前書同様よろしくお願いいたします。

(構成:矢口)
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