- 著者インタビュー
- 理科
理科はアクティブ・ラーニングを取り入れやすい教科だとされています。というのは、通常の理科の授業では、演示実験またはグループごとの生徒実験を行っているからです。観察・実験は必ず活動を伴い、生徒が主体的になりやすいのは間違いありません。また、グループ実験は、生徒同士が互いに関与する協働的な学びの場面ができやすいのも確かです。つまり、観察・実験はアクティブ・ラーニングと相性がよいのです。
しかし、理科の授業に観察・実験を取り入れることが、それだけで生徒の主体的な学びを設定していることになっていると言えるのでしょうか。また、グループ実験が協働的な学びの場に必ずなると言えるのでしょうか。
実際、研究授業を参観すると「活動はあるが学びがない」授業に出会うことがあります。課題解決が形式的になっているパターンです。確かに、生徒が行う観察・実験は活動的に見えるかもしれません。しかし、主体的ではない、あるいは協働的ではない単なる作業のような観察・実験に陥っていることがあります。
例えば、授業で演示実験をするとき、「先生が行い、生徒はそれを見るだけ」の場合と、「生徒の代表が実験をやってみせ、先生はその支援に回る」場合では、明らかに後者の方が生徒の主体性や協働性が高まります。
また、生徒実験についても、レシピにしたがって行うだけの「お菓子づくり」のような観察・実験をしていないか、十分に留意したいものです。さらに、科学的な事実を確認する実験や科学的な事象を体験させるための実験よりも、仮説の検証のための実験(実験方法を児童・生徒が考える実験を含める)の方が、主体性や協働性が高まるのは言うまでもありません。
「何を説明するのか」、それが明らかになっていないと「説明する」活動はうまくいきません。逆に言えば、何を説明するのかさえ明らかになっていれば、「説明する」活動はうまくいく場合がほとんどです。
そのためのポイントは、「結果と考察を区別する」ことです。
生徒の説明は、観察・実験の結果のみにとどまっていることが少なくありません。こういった場合、「先に結果を述べ、次に考察を述べる」といったように、順序を示して結果と考察をはっきり区別して説明するように指導します。
アクティブ・ラーニングの評価は難しいものです。アクティブ・ラーニングが、学習する態度に深くかかわるものだからです。評価の4観点でいうと、「関心・意欲・態度」に当たる部分で、この観点の評価が難しいことは、多くの先生方が実感されていると思います。
評価技法として唯一絶対の技法があるわけではありません。いくつかの技法を組み合わせて用い、それらの評価資料を総合的に判断するべきでしょう。
以下の3点は押さえておきたいところです。
1 個人内評価的視点を生かします。学習活動の時系列的な変化の跡をたどり、態度の形成過程をとらえます。
2 単元を通した長い時間的スパンで評価します。一時的に意欲的な行動がみられても、消失することもあります。恒常的な側面に着目して態度の現れをとらえ、評価の資料として利用するようにしたいものです。
3 外に現れた客観的な行動を通して、内面を読み取ります。発言や挙手の回数で判断するのもよいですが、他の行動も総合的に視野に入れ、多面的に判断するようにします。考察に書かれたことを読み取り、生徒の内面の変化を表す言葉や行動の微妙な特徴をとらえて判断するように心がけたいものです。
注意点として、生徒が指示・命令に従順であるかどうかなど、教師の側の指導のしやすさや好ましさだけを判断基準にしてはいけないということがあげられます。また、楽しそうに活動している、活発に活動している、など、行動特徴だけで判断することも避けなければいけません。