著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「感動のドラマ」を生む学級づくりの原則
岡山県岡山市立浮田小学校 教頭岸本 勝義
2017/3/9 掲載
 今回は岸本勝義先生に、新刊『「感動のドラマ」を生む学級づくりの原則』について伺いました。

岸本 勝義きしもと かつよし

岡山県生まれ。岡山市立浮田小学校教頭。岡山の公立小学校教諭・指導教諭を経て、現在に至る。たくさんの特別活動の実践をもとに、自治的学級集団づくりや人間関係づくりを追究している。また、オリジナルな教材開発をもとに、授業づくりのおもしろさや子どもの学習技能を育てる日常的なプランを提案する。
共著に、『スペシャリスト直伝!〈失敗談から学ぶ〉学級づくり・授業づくり成功の極意』『THE 特別支援教育〜通常の学級編〜』『スペシャリスト直伝!授業参観&保護者会 成功の極意』などがある。

―本書は、「学級のドラマ」を生む仕掛けや、その向こうにある子ども達の可能性を引き出す取り組みが満載の1冊になっていますが、まず本書のねらいと読み方について教えて下さい。

 本書では、「感動のドラマ」といった非常に情緒的なテーマを取り上げました。読者の方々のクラスで「感動的なできごと」と言うと、どんなことが思い出されるでしょうか。合唱をみんなでがんばったこと、運動会ですばらしい表現をつくりあげたこと……。
 どのクラスにも、「感動」場面はあるはずです。大きな行事だけではありません。日常の学校生活の中にあるはずです。その日常的な場面のいくつかを第1章で示しました。「私のクラスにもこんなドラマがあった」ということを思い出していただけたらOKです。第2章以降で、その皆さんのドラマは偶然性だけでなく、「このような布石があったんだ」とか「子ども達のこういう力が具現化されたんだ」ということに気がつくと思います。

―本書のサブタイトルは「主体性と対話を引き出すプロデュース」となっていますが、「主体性」「対話」は、発表された答申・学習指導要領でもポイントとして指摘されている部分です。学習の場として、学級づくりの重要性もこれまで以上に高まると思いますが、どのような取り組みが大切でしょうか。

 「心を動かされる」子どもたちの姿には、必ず子どもたちの「自立場面」があります。それは協働的な活動であったり、課題を克服して乗り越えた活動であったりします。そのときに、子どもたちにどのような「志」「考え方」をもたせるかが大切となります。形ばかりの自主的な活動や話合い活動を取り入れても、効果はあがりません。その「志」「考え方」をもとに、自立や学びに向かう活動にするために、6つのキーワードを提示しました。

―その学級づくり成功の「6つのキーワード」として、(1)自己決定(2)相手意識(3)集団思考(4)個の存在感(5)関わり(6)誇りを挙げられています。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 この6つのキーワードは、感動場面をつくり、子ども達が自立に向かうポイントです。第3章に示す活動のすべてが、このキーワードのどれかに基づいています。方法だけを取り出して実践すると、意図と反対の結果を生むことがあります。この活動は、このキーワードに関わっているということを意識しながら読んでいただけるとわかりやすいと思います。

―本書の第3章では、「ドラマ」を生む学級づくりのストラテジー(戦略)として、学級開きから学級目標、ルールづくりから様々な活動まで、1年間の取り組みが豊富な資料とともに紹介されています。このような取り組みには子どもたちの意識や雰囲気づくりも大切だと思いますが、ポイントがあれば教えて下さい。

 あえてストラテジー(戦略)という言葉を使わせていただきました。「感動のドラマ」は意図的につくり出せるものではありませんが、そういう状況が生まれるための土壌づくりはできます。そのためにも、協働的な学級風土、それを支える貢献感や有能感、友達への信頼感を育てることが大切です。取り上げた取り組みは、長いスパンのものもあれば、すぐにでもできるものもあります。大まかに時系列で並べていますが、どこからでも取り組むことができます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 「感動のドラマ」をつくり出すことが目的ではありません。ただ、こういう「感動場面」を経験している子ども達は、心が豊かであったり、生き方がしなやかであったり、自立していたりします。そのベースには、「人と人がつながるすばらしさ」「人の心を動かす経験」があります。ドラマの向こうにある子ども達の可能性をのばす教師の挑戦をぜひご覧ください。

(構成:及川)

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2017/3/11 21:37:57
    友達と協力することにあまり価値を見出してこなかった子どもたちを担任し、まずはみんなで学級目標の掲示をつくるところからスタートしました。全員ですることで、1年を通して目標を意識し続けることができました。特別活動のすごさを目の当たりにしました。
コメントの受付は終了しました。