著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
6つの視点で子どもがいきいきする社会科授業へ!
青森県つがる市立向陽小学校教頭平川 公明
2018/11/8 掲載

平川 公明ひらかわ きみあき

1966年(昭和41年)生まれ。秋田県能代市出身。弘前大学大学院教育学研究科修了。青森県内公立小学校、弘前大学教育学部附属小学校教諭を経て、平成30年4月より現職。
共著に『小学校社会科 学習課題の提案と授業設計』(明治図書、2009)『教科調査官が語る これからの授業 小学校』(図書文化社、2012)『子供の思考をアクティブにする社会科の授業展開』(東洋館出版社、2016)など。

―まず、本書の書名にもあります、「主体的・対話的で深い学び」、「授業改善」について、簡単に教えてください。

 社会科で「主体的・対話的で深い学び」を実現させるためには、ポイントが2つあると思います。まず、一つは、子どもが自ら学習問題を発見し解決する問題解決的な学習を展開させることです。もう一つは、地名・人名や用語などの知識の習得、グループ発表や社会科新聞などの表現活動ばかりに目を向けるのではなく、そこに至るまでのプロセス、子どもの姿に目を向けて、自分の授業を改善していくことが大切だと思います。

―1章では、授業改善のための視点を6つご紹介いただいていますが、なかでも初任の先生や社会科が苦手という先生に特に意識してもらいたい視点がありましたら是非教えてください。

 最初に意識してもらいたいのは、視点1「なぜ?どのように?どっち?の学習問題」です。例えば、学習問題が「新聞社の工夫や努力について調べよう。」といった漠然とした呼びかけ文だと、活動や発問をいくら工夫しても、子どもは主体的に学ぶことができません。しかし、「なぜ、新聞社は毎日15万字もの情報を発信することができるのだろう。」というような具体的な疑問文にすれば、何を調べ考えればよいのか、迷わず自信をもって学習に取り組めるようになると思うのです。

―2章の授業プランでは、趣向を凝らした授業内容を3〜6年生の全学年ご紹介いただいていておりますが、もしよろしければこれまでに失敗してしまった授業と、その授業をどう修正・改善していったのかについて1つ教えていただけますか。

 印象に残っている失敗と言えば、3年「火事からくらしを守る」の授業です。「消防署博士になろう!」という学習問題を提示し、見学にも行き、グループごとに疑問に思ったことを調べさせたのですが、休み時間、子どもの中から「ああ、また消防署の勉強か…」という嘆き声が聞こえてきました。自分としては子ども主体の授業をしていたつもりでしたので、ショックでした。子どもが解決したくなるような学習問題を工夫するようになったのは、それからです。ちなみに、前回この単元は、「なぜ、消防署の人は5分で火を消し始めることができるのだろう。」という学習問題で授業しました。

―社会科は面白い!と感じる子が減り、社会=暗記すればよいと思っている子どもがたくさんいるとよく耳にします。先生がお考えになる「子どもたちに感じてほしい社会科の面白さ」とはどういったものなのでしょうか。

 思わず「なんで?」と声が出てしまうような常識で考えれば意外な事実と出会い、一生懸命調べ考え、「なるほど!」と心から納得できる答えに辿り着いた時の爽快感や満足感、これが社会科の面白さだと思います。しかも、一人じゃなく、仲間と一緒に知恵を寄せ合い、話し合いながら問題を解決していくのは、なおさら面白いはずです。わたしは、いつもそんな社会科授業を目指しています。

―最後に全国で社会科を教える先生方へ、一言メッセージをお願いします。

 「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指し、問題解決的な学習で社会科の授業を展開すると、自分の授業の善し悪しが、子どもの反応を通してダイレクトに伝わってくるようになります。まさに日々挑戦です。うまくいくこともあれば、失敗することもあると思いますが、この挑戦に前向きに取り組むようにすると、社会科の授業が先生方にとっても楽しいものになると思います。本書は、そのお手伝いにと思い執筆したものです。

(構成:中野)
コメントの受付は終了しました。