
- 著者インタビュー
- 図工・美術
子どもが手を働かせて、または、手の延長のように用具を使って表し方を工夫している姿が好きです。だから、工作、立体、造形遊びなどの授業が多くなりがちです。
その授業で、何がポイントか、何ができればよいか、自分たちにゆだねられている部分は何か、ということが子どもたちに伝わりやすい導入を心がけています。授業の最初に子どもたちを集めて実演をして見せ、早くやりたくなるような、その先を工夫したくなるような気持ちを引き出します。わざと失敗してみせると、子どもたちがいろいろなことを考えて話し始めます。
まず、「何をやるか」というゴールイメージを抱きます。そのゴールは作品づくりでしょうか。次々と工夫する子どもの姿でしょうか。形や色を通したコミュニケーション(材料と子ども、子どもと子ども、など)でしょうか。
例えばこの3つのゴール(見取りたいこと)のどれに重点をかけるかを教師が決めるだけでも授業は生まれ変わります。「全部」というのは、よくばりです。教師が見取りたいことをしぼると、授業のめあてが明確になり、子どもが安心して力を発揮できます。
粘土の表現でも、再現的な立体作品をつくる授業、変形・変身を楽しむ授業、粘土体操的に全身の感覚を使う授業や協動的な授業などが思い描けますよね。
本書に掲載の題材から紹介します。
低学年では、「太いふででグングンかこう」のように、共同絵の具を太い筆でグングン塗るような表現を楽しみながら、友達とのコミュニケーションを深める活動がおすすめです。
中学年では、パレットの扱いが重要です。「三原色でつくる無限」では、個人絵の具の扱いを確認しながら混色を工夫し、それぞれの個性が光る表現が生まれます。
高学年では、電動糸のこぎりを使い始めます。「複雑マニアになろう!」は自己表現の追求ですが、道具の扱いを協力したり表現を見合ったりしているうちに友達とのかかわりや学び合いが生まれます。
「造形遊び」の「遊び」には、「実験」「研究」などの意味もあります。高学年ほど、「実験」や「研究」という言葉に知的好奇心を抱きます。この遊び心や探究心を大切にしています。
一方、「まね」という言葉も肯定的にとらえて授業に生かします。元になる考えや工夫を更に高めていくことで人間は文化を高めているのです。「きみの工夫はここだね」と認めてあげると、子どもは自信を深めて更にチャレンジし始めます。
聞いてあげるということも大切です。子どもは、自分のことを話しているうちに考えがまとまってくるということもよくありますよね。
図画工作の授業では、教師の予想を超える子どもの発想や表現に出会うことがよくあります。
「効率よく・正しく」という学びだけではなく、「まだ見ぬ新しい未来に対応する力」という学びにも通じている大切な教科です。
教師は、教えることは重要ですが、子どもが学ぶ、学びを広げるということも重要だということです。
そのための言葉かけのヒントを本書にまとめました。
どうぞ、手にとってご一読ください。
