著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもの心を揺さぶる教師のコトバ
大阪府立大阪市公立小学校教諭金大竜
2020/2/6 掲載

金大竜きむてりょん

1980年生まれ。日本一ハッピーな学校をつくることを夢見る,教師歴18年目の大阪市小学校教員。周囲からは“ハッピー先生”と呼ばれている。子どもの本来もっている力をどのようにしたら開花させられるのかを研究している。
教育サークル「教育会」代表。各地のセミナーで講師を務める。また,「あいさつ自動販売機」など,学級づくりにかかわる取り組みが,様々なメディアに取り上げられている。

―本書はキム先生の「学級通信」を紹介するご本ですが…、実物を見せていただけませんか?どのくらいの頻度で出されているのですか?

 毎日、または、2日に1回ペースの年がほとんどですが、若い頃は「足並みを揃えて欲しい」と言われて、出せないこともありました。
 
 そんな年は、学級通信を配付せず、教室で読み、誰もが自由に読めるようにファイリングしておいたり、子どもの変化を電話で伝えたりするようにしていました。何かができないときは、「通信を出す目的」を考え、「通信以外の方法でできないか。」を考えていました。
 
 何かを理由にできないことに不満を抱く時間があったら、他の方法でできないかを考える方が楽しいですからね。

図1

―教室で読む学級通信、いいですね。今も学級通信を読む時間を設けていらっしゃるのでしょうか。子どもたちはいつ、読むのですか?

 読む時間はこの時間にとは決まっていませんが、基本的には朝5分ほど使って読んでいます。学級通信は前日、子どもたちに話したことや指導したことを書いてあることも多くあります。子どもが意識して行動することで、定着したり、気付きがあったりします。

 また、読むだけでなく、読み終わった後、ペアで学級通信を話題に話す時間を設けています。その中で出てきた疑問は必ず質問をするように話しています。
 その日に意識したことは、その日の日記に気付きや考えたことを書く子が多くいます。それらを取り上げて、次の日の学級通信に載せることもあります。
 自分のことが書かれていたら、もちろん子どもは嬉しそうにしています。普段より、大事そうに通信を扱っている姿も見られて、可愛らしいなと思っています。

 学級通信の中で取り上げた子どもの言動をすぐに真似る子もいますが、それを求めているわけでもないので、特に褒めることはありません。「なぜこうするのか。」「なんの意味があるのか。」学級通信を媒体にそんなことを子どもなりに考えて、行動してくれるのが一番いいなと思っています。

―学級通信を媒体に子どもたちを育てていらっしゃるのを感じます。でも、なぜお話しされるのではなく、学級通信なのですか?

 様々な刺激が子どもにはあるといいからです。話もする、授業もする、それとは別に文字にして読めるようにする。そうしてあの手、この手で子どもが自分の価値観について考える機会、見直す機会を増やしたいと思っています。

 あとは、楽しいからですね。自分が楽しいこと以外は続きません。

―学級通信は先生の楽しみですか!その楽しみが子どもたちに及ぼす効果もどうぞ教えてください。

 ここまで書いてきたことに加えて、学級への所属意識を高めることにもなりますね。普段は実名で載せていますし、写真も載せます。そうして、みんなの中の自分を客観的に捉えることで、自分にはこの教室に居場所があることを感じて欲しいなと思います。

 特に写真は、何かを頑張っていたときの写真だけでなく、楽しそうにただ教室で過ごしているだけのものも多くあります。「頑張らなくとも、ありのままのあなたで。教室にいてくれることが尊いことで、素晴らしいことだ。」と子どもが感じてくれたらいいなと思っています。

―本書を手に取ってくださった先生方にもどうぞメッセージをお願いします。

 この本には、僕から子どもへのメッセージがたくさん詰まっています。僕は、子どもに「学校のルールでしょ。」「そういうものだよ。」というのがすごく嫌です。「なぜ、そうなのか。」「本当にそうなのか。」を一緒に考えていきたいのです。そのためのツールとしての学級通信でもあります。
 
 ぜひ、この通信を読み、使えるところは使ってもらいながらも、読者の皆さん自身も「本当なのか?」「それでいいのか?」「今のままでいいのか?」と考えてみてくださいね。

(構成:佐藤)
コメントの一覧
9件あります。
    • 1
    • 日野敦史
    • 2020/2/10 21:15:06
    78点でいいから…っていう発想はありませんでした❗️
    100点を目指すと、動けなくなる…

    その他にも、「そう考えればいいんだぁ」とたくさんのヒントが散りばめられていました!

    朝の会で、子供たちに伝えたいです✨
    • 2
    • まゆみ
    • 2020/2/10 22:32:02
    「どんなあなたでも、この教室にいてくれることが嬉しい。」
    という大人が私の子ども時代にいたら、どんなに素敵な子ども時代を過ごせただろう。
    今、教員として、子ども一人一人自分らしく輝いてほしいと願っている私にとって、ヒントとなる言葉が散りばめられている本です。
    • 3
    • ちひろ
    • 2020/2/11 0:35:53
    今までは、頑張っている子を褒めることは、いいことだと思ってきました。しかし、金先生の学級通信の「気楽に笑って78点」というタイトルを見て、それは逆に子どもたちを苦しませていたのか…と気づかされました。
    子どもたちの本質を理解し、声をかけていくこと。そんな金先生の愛が、この本にはたくさん詰まっています!
    • 4
    • ゆうこ
    • 2020/2/11 15:47:47
    これまで金先生の講座に何度も参加させていただき、そこでいただく通信はどれも本当に素晴らしい内容で、
    「どうしたらこんな心から納得できる言葉が書けるのだろう」と不思議に思っていました。
    金先生の通信は、教師である自分が人としての自分がなんだか、そのままでも十分素晴らしいんだって元気をもらいます。手元に届くのが楽しみです😆
    • 5
    • 名無しさん
    • 2020/2/11 16:18:27
    金先生は、日々子ども達の生の声を聞き、子ども達の奥底に眠る本当の思いを読み取ってるなぁと思います。そのためのツールとして、学級通信があると感じています。この本は、どんな言葉を選び、どのように伝えているかが見て分かる一冊となっています。ぜひ、お手に取ってご覧ください!
    • 6
    • さわ
    • 2020/2/11 21:58:00
    読んでいて、金先生の温かさが伝わってきます。子どもに「なぜ、そうなのか」と考えるきっかけをつくっておられるのがよく分かりました。この学級通信を読むと子どもだけでなく、きっと大人も元気になります!
    • 7
    • のりやま
    • 2020/2/11 22:05:11
    『気軽に笑って 78点』

    教師や子どもはつい完璧を求めますが、78点のクラスは余裕があって楽しいそうですね!

    金先生の1年を渡る学級経営が通信から知れるのは楽しみでしたかありません

    早く自分の手に届くのが楽しみです
    • 8
    • あさみ
    • 2020/2/15 14:35:39
    やる気に相談してしまう私(笑)
    大人の私が読んでも、なるほど〜となりました。
    学級通信で、子どもだけじゃなくて、保護者に伝わるのが、素敵ですね!
    通信の内容の次元が違います!
    こんな内容が書けるようになりたいです!
    読みます!

    • 9
    • 3年目教員
    • 2020/2/16 22:26:22
    わたしが初めて参加した講座は金先生のものでした。学校や先生は、100点を取るのが○、頑張らない子は×、廊下は走っちゃダメ!などと当たり前に言うけれど、そんないい悪いに「本当にそう?」と問い直してくれたのが金先生でした。確かに、「なぜだめなのか」を自分自身が考え、伝えることはしてなかった。いつも目から鱗な話をしてくれる金先生が書かれた学級通信、先生も子どもも楽になること間違いなしです^^
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