- 著者インタビュー
- 特別支援教育
子どもの発達支援を専門にしている関係で、多くの方から「こんなときどうすればよいのか?」という質問を受けます。その際、先人から学んだ発達や障害の知識、及び数多くの子どもや保護者から直接学んだ経験をもとに、相手に寄り添った回答を目指してきました。本書は、このようなやりとりの中から、特によく聞かれる質問を中心にまとめてみました。考え方のバリエーションが100もあり、それだけ多くの引き出しから取り出しやすくなっています。できるだけハウツー的なものにならないよう、回答を読みながら、皆さんの子どもとのかかわり方のエッセンスが見いだせればよいと考えています。
質問内容は非常に多岐にわたっています。一見バラバラに見えますが、実はそれぞれが密接に結びついています。例えば「感覚・運動」の「音に敏感」「人に触れられることが苦手」「姿勢の保持が難しい」という子どもは、どうしても身体の動きが増え、イライラしやすくなります。このことから、運動面と情緒・行動面は深く関係していることが見えてきます。子育ては、どこか1つに注目するのではなく、いろいろな面をトータルで見ることが大事なのです。
子育てに取扱説明書があったら便利なのかも知れません。しかし実際には、全員にぴったり合うものは存在しません。よい方法は、子どもの数だけあるのです。ただし「よくないこと」は比較的共通しています。本書では、「こうするとよい」と「こうすべきではない」ということの双方を述べています。実は、間違った子育て観・教育観を1つずつ減らしていけば、いつの間にか子どもがよく育っているということも多々見られます。その意味では、読者の方が「自分はこれでよいのか」というように、自分自身を振り返るよい機会にもなるでしょう。
ややもすると、私たちは子どもたちに「課題を早く解決する」ことを求めてしまいます。しかし、実際にはすぐに解決することばかりではなく、多少時間はかかっても、よりよい答えを導き出すことも大事な力となってきます。その意味で、大人自身も子育てにおいて結果を焦らないことが大切です。なかなか解決できない問題に対し、時間をかけて、宙ぶらりんの状態を楽しむくらいに考えることが、実はよい結果につながることもあるのです。「何とかなるさ」で、いつの間にか子どもが育つことが実は非常に多いのです。
多くの教師や保護者が一生懸命子どもたちと向き合っています。その一生懸命さがよい方向に向かえば、どれだけ子どもの育ちにとってプラスに働くことでしょう。その一方で、少し方向がずれてしまい、それに気づくことなく、ひたすら突き進んでしまうケースも見られます。方向が違えば、行き先も違ってきます。そのため、私たちには常に自分のかかわりを客観的に見ることが大事なのです。本書は、このように皆さんが迷ったときの道しるべになると確信しています。どこからでも読むことができる事典のような本書を、是非、皆さんの手元に置いていただければ幸いです。