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- 学級経営
学級経営において最も大切なのは、「俯瞰の目」をもつことです。
本書の役割は、そこにあります。
「俯瞰の目」をもつには、まず、学級経営の「ゴール」を知っておかなくてはなりません。どういう状態が学級経営における最高の状態なのか。それを知らなければならないのです。
さらに、ゴールまでの「筋道」も知っておかないといけません。ゴールまでの道のりがわからないと、現在どの位置に学級経営が到達していて、次にどの方向に学級経営を進めていけばよいのかがわかりません。
そして最後に、具体的な「指導法」を知っておかないといけません。「この段階では、この方法で学級経営を進める」という具体的な指導法を知っておかないと、有効な手立てを打つことはできません。
本書は、このようなことを押さえながら、学級経営において「俯瞰の目」をもっていただくためにつくられた本です。
本書の画期的なところは、歴代の先人の学級経営の知見を紹介し、それを踏まえたうえで、より大切な“重要な知識”を紹介しているところです。しかも、学級経営に関するその“重要な知識”は、学級経営のほとんどすべての内容に渡って網羅しています。
学級経営の「ゴール」に関することで言えば、「俯瞰の目」をもつための知識の紹介に始まり、これからの学級経営で目指すべきゴールの提示を行っています。
また、学級経営のゴールを達成するために、子どもの考え方をよりよいものに変える(「子どもの変容」)指導法も詳しく紹介しています。子どもの考え方を変える指導法をここまで詳しく解説した書籍は、他にないと思います。
また、学級経営にとって、「よりよい環境づくり」も大切な要素の1つです。よりよい環境をどのように構築していけばよいのか、詳しく解説しています。
さらに、「個別指導と集団指導(集団づくり)」も大切な柱の1つです。集団づくりの方法に関する指導法と自治に関する指導法、個別指導と集団指導の連動の仕方などを紹介しています。
「学級経営と授業」も大きな柱の1つとして扱っています。学級経営と授業づくりをどう連動させたらよいか、具体的な指導法を紹介しています。
最後に「教師のマインドセット」として、子どもとの心の交流や、無意図的な教育に表れる教師の人間観や指導力など、多岐にわたって論じています。
このように、学級経営に必要な多くの内容に関して、“重要な知識”を紹介し、具体的な指導法を挙げながら解説を加えました。
学級が成長してくると、様々なダイナミックな動きが子どもから生まれてきます。
そして、次々と新しい付加価値を生み出す動きが生まれてきます。
さらに、子どもたちは自分で目標を設定し、軌道修正しながら、様々なことに挑戦するようになります。
つまり、学級が成長すればするほど、ダイナミックな動きが多く生まれるのです。
こうなると、学級担任がすべての動きを把握するのは困難になってきます。そこで、どの子のがんばりも加点方式で認めていくための「システム」づくりが大切になってくるのです。たとえ学級担任が子どもの挑戦や努力を見逃したとしても、その挑戦や努力が認められるようにするということです。
例えば、子どものがんばりが定期的に教師に報告されるシステムにしてもよいですし、教師でなくてもまわりの友だちから称賛されるシステムをつくってもよいでしょう。
また、他の教師や保護者、他の学級・学年の子どもから称賛されるシステムをつくることもあるでしょう。
いじめが起きなくなるシステム、学級環境によいムードを自然と生むためのシステム、競争原理ではなく協力原理が働くシステム、学級の風土をつくるシステムなど、他にも様々なシステムがあります。
学級経営に、いくつのシステムをつくることができるかに教師の力が現れるのです。
先述のような学級経営における“重要な知識”は、だれも教えてくれません。
なぜ、だれも教えてくれないのでしょうか。
理由は簡単です。
それらは、すぐに教えられるような簡単な知識とはまったく異なるからです。
“重要な知識”には、たくさんの知識が含まれており、それらを理解するには、ある程度の経験の蓄積が必要なのです。
そのため、“重要な知識”だけ聞いたとしても、「よくわからない」で終わることがあるのです。
きちんと“重要な知識”を教えようとすると、例をあげながら、丁寧に説明する必要があるので、普段の忙しい時間の中で教える人は滅多にいないわけです。
例えば、学級経営の最高の姿、「ゴール」を知っておくだけで、学級経営は変わります。
ゴールがわかるからこそ、そのゴールに向かうための手立てがはじめて見えてくるからです。また、ゴールに向かうまでに、自らの歩みを自分で調整したり、手立てを細分化したりできるのです。
反対に言えば、ゴールを知らないと、学級経営の進め方を知らないということになってしまいます。学級経営のゴールも知らない教師に、担任してほしいと思う子どもは一人もいないでしょう。
「学級経営のゴールも知らないまま、教師を続けますか?」
本書は、すべての教師にこう問いかけるものとなっているのです。