- 著者インタビュー
- 算数・数学
スタートは、「ちょっとよくわからない」「困ったなぁ」「間違えちゃった」といった小さな子どもの困り感ですね。単にテストの回答率が低い場面や問題にとどまりません。
そのちょっとした困り感を丁寧に取り上げて、学び合いの土台に載せれば、困っていた子もわかっていたつもりの子もわかっていた子も思考力・判断力・表現力が高まります。
結果、どんな問題に出会っても、自信をもって挑むことができます。「つまずき」は、そんな豊かな学び合いの宝物だと思っています。
若い頃も当然「一人一人を大切にしたい!」とう熱い思いはもっていました。しかし、その思いが先行し、一人一人の困り感に対して、教師が一対一で手助けするという方法しか思いつきませんでした。今思えば、つまずかないように過剰な手助けをしていたことになります。そんな中、「ちょっとわからないんだけど…」と積極的に困り感を学級全体に表現する子どもたちに出会いました。なんと、勝手に説明し合い盛り上がるではありませんか。「一人一人が輝いている!」「将来この子たちに必要な力は、この学び合いに詰まっている!」と感じました。
「わからない」「困った」「間違えちゃった」。そのような、友だちのつまずきをクラスみんなで助け合い、解決していくことこそが「学び合い」だと思っています。その過程が、予測できない未来を生きる子どもたちに必要な力を育てます。しかし、「学び合い」は、すぐにできるわけではありません。土台は、安心して間違えられる集団づくりです。認め合い・つなげ合い・深め合う学習集団づくりのポイントにも本書では触れています。
1年間の学習集団づくりを「土作り」「種まき」「生長」「開花」とイメージしてみてください。「土作り」や「種まき」の時期では、価値付けや学び合いの進行役といった教師のアクションは必要です。しかし、少しずつ子どもの力に委ねていき、「生長」では、『間』や『沈黙』が子ども達の自立の証となります。価値ある「脳内のざわめき」です。そして、「開花」の時期には、教師が存在感を消していても子どもたちだけで学び合いが成立していく。大切に育てた子どもを信頼して、「待つ」ことを楽しんでみませんか。
私たち教師もうまくいくことばかりではありません。子どもと同じようにつまずきます。子どもたちや仲間の先生や先人の言葉に励ましてもらい、高めていけるのだと思います。本書もそんな励ましの一助になれば幸いです。小学生の基礎・基本は、「好き・やる気!」。つまずきを生かした深イイ授業を展開し、日本中に算数好きの子どもたちを増やそうではありませんか。