著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
目の前のその子に合わせて変えてゆく教材づくり
作業療法士ごーや
2022/4/8 掲載
今回はごーや先生に新刊『手指の発達を支援する手作り教材アイデア』について伺いました。

ごーや

作業療法士。
病院で発達障害をもった子どもたちのリハビリに携わる傍ら、Instagramでも療育に関心のある保護者、支援者、教育者向けに、「早い、簡単、安い」をコンセプトに家庭や施設、保育園や小学校で使える手作り教材・おもちゃを作成し紹介している。

―このたびは『手指の発達を支援する手作り教材アイデア』で大変お世話になりました。本書では「手指の発達」の支援をメインに取り上げていますが、手指の動きが発達するとどんなことが期待できるのでしょうか?

 子どもに限らず人間にとって手を使うという行動は日常生活の行動をよりスムーズにしてくれますし、より豊かにしてくれるものだと思います。特に子どもの場合には、最初から自由に手指を動かせるわけではないので、手指の発達が進むにつれ徐々にできることが増えていきます。手指を含めた手全体が自由に使えるようになることは、子どもの可能性を拡げることになりますし、自分で「できた」という自信にも繋がっていくかと思います。そのために手指の発達を支援することは大切なことではないかと考えています。

―先生が手作り教材を作りはじめたきっかけを教えてください。

 僕が教材作りを始めたきっかけはInstagramでの投稿に始まったことではありません。日々の病院での療育の中で、市販で売っている教材だけでは療育に通うお子さんの状態やニーズに合わないことが多くあります。さらに、療育で使用する教材の多くは価格が高いことが多いため、子どもに合わせて毎回教材を購入することもできない現状がありました。そのため、手作りで教材を作成することが日常的にありました。それに加え、専門機関での療育が環境的な問題や社会的な問題でなかなかできないお子さんがいる現状も踏まえ、家でも安く、簡単に、楽しく療育ができる方法はないかと考え、手作り教材を作り発信していくことにしました。

―先生が手作り教材を作成する中で最も大切にしていることは何でしょうか?

 手作り教材で最も大切にしていることは「わくわくするかどうか」です。もちろん、教材を使うことで何かしらその子のニーズにあった動きができること、ねらい通りに動かしてくれることも大切なことではあると思います。しかしながら、「面白そう、楽しそう、やってみたい」と「わくわくする気持ち」がないとただ教材を使って療育をしているだけで、子どもたちが主体的に動いてくれることは少ないのではと考えています。大人も同様にわくわくしないものに興味をもって取り組むことは難しいですよね。子どもなら尚更そうじゃないかと思います。だから、まず「わくわくするかどうか」を一番大切にしています。

―「子どもたちのために手作り教材を作りたいのですが、絵も苦手だし不器用…」というときはどうしたらよいのでしょうか?

 先にお答えしましたが、まず子どもが「わくわくするかどうか」が一番大切なことであると考えているので、絵が苦手かどうかや不器用だからうまく作れないというのはあまり重要ではありません。もちろん怪我が無いようにしなくてはいけませんが、うまく作ろうとせず、子どもの「好き」に合わせて「わくわくしそうなもの」を作ろうと思えると良いのではないかと思います。Instagramや今回の書籍で紹介している教材については、作業工程や材料が少ないものが多いのでそこも参考にしていただけると良いかと思います。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 本書を手に取ってくださり、誠にありがとうございます。本書を手に取ってくださった方々は、きっと、もっと子どもたちに対してできることはないかと日々悩みながら、試行錯誤して育児や支援をしている方々ではないかと思います。そんな方々の手助けに少しでもなれたらと思いますし、関わるお子さんも教材を渡す保護者や支援者の方々も、どちらもわくわくしながら教材に触り、楽しみながら学校・家庭・施設などでの療育に取り組んでもらえたらと思います。

(構成:芦川)

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