- 著者インタビュー
- 算数・数学
これからの社会は、価値多元化社会と言われています。そうした社会では、多様な価値観をもった人たちが協力しながら生きていくことになります。そして、時には自分と考えの違う人とも話し合う必要があります。そこで子どもたちには自分の考えを価値観と数学的モデル(式など)を用いて述べていく力が求められています。そして、お互いに学び合うのです。子どもたちの答えは多様性を示し、正しい答えが一つに決まるというわけではありません。まさしくオープンエンドアプローチを体験することになるのです。社会的オープンエンドな問題を用いた授業を通して、正解なき時代を生き抜く力が身に付くことになります。また、このような活動を通して数学的な見方・考え方も身に付くのです。
最大の魅力は、子どもたちが喜んで授業に参加するということです。本書のp.16に、社会的オープンエンドな問題を用いた授業の子どもたちの詳しい感想が載せられています。どの子どもたちも自分の力に応じて問題を解決することができるので、社会的オープンエンドな問題を用いた授業に喜んで参加するのです。友達の意見を聞いて感動したり、学び合ったりすることができるのです。また、社会的オープンエンドな問題を通して、多様な価値観や数学的な見方・考え方を共有したり、磨いたりすることができるのです。
社会的オープンエンドな問題に関心を示された小学校の先生方に集まっていただき、毎月1回のZoomによる会議を開催しました。低学年、中学年、高学年のグループに分かれて事前に話合いをしてその結果を全体会で発表してもらいました。その会では、社会的オープンエンドな問題を用いた授業実践を通して子どもたちがどのような社会的価値観と数学的モデルや数学的な見方・考え方を表出したのかを発表してもらい、意見交換をいたしました。
こうした活動を通しながら、このような問題に関心をもつ現場の先生方の範囲も広がり、東京都以外にも神奈川県や愛知県や岐阜県と広がり、本書の出版後には埼玉県の先生も入られました。社会的オープンエンドな問題という言葉も、少しずつ広がりを見せています。とても嬉しく思っております。この先生方のお陰で、本書に32の実践例を掲載することができました。できればいつか、第二巻を出版できると嬉しいですね。もし、私たちの研究会に参加し、社会的オープンエンドな問題について勉強したいという方がおられましたら、私たちまでご連絡ください。
久しぶりに小学校4年生に社会的オープンエンドな問題(本書の「的当てで遊ぼう」)を用いた授業を行いました(下記写真参照)。文部科学省の笠井健一先生も見に来てくださいました。子どもたちは社会的価値観と数学的モデルを用いて多様な考えを発表し、お互いの考えから学び合うことができました。文部科学省の笠井先生は、私の授業をご覧になり、「これならわかりやすいし全国の小学校の先生方にも勧めることができる」と認めてくださいました。そして、本書に推薦文を書いてくださいました。こうした社会的オープンエンドな問題を用いた授業は、今後ますます重要になると推薦文をお寄せくださったのです。
読者の先生方には、本書を手にしていただき、本書の32の実践例を参考にしながらご自分のクラスで授業実践してみてください。きっと子どもたちが喜ぶと思いますよ。
「小学校4年生に社会的オープンエンドな問題(本書の「的当てで遊ぼう」)を用いた授業の様子(2022年5月14日)」