- はじめに
- 推薦の言葉
- 第1章 多様な価値観や数学的な見方・考え方を磨く 算数授業のオープンエンドアプローチ 理論編
- 問題解決の問題について考えることで広がる地平:社会的オープンエンドな問題
- 広島大学大学院人間社会科学研究科 /馬場 卓也
- 社会的オープンエンドな問題を使って算数の授業をしてみませんか
- 元日本体育大学大学院教育学研究科 /島田 功
- 第2章 多様な価値観や数学的な見方・考え方を磨く 算数授業のオープンエンドアプローチ 実践編
- 分配問題
- 1年「6つのあめをわけてみよう」
- (トピック教材:いくつといくつの学習中)
- 1年「どんぐり,どうしよう」
- (具体物を等分する学習)
- 2年「どのように分けるのがよいかな」
- (トピック教材:わり算の素地指導)
- 3年「イスは何脚必要かな」
- (あまりのあるわり算)
- 4年「合宿所の部屋割りを考えよう」
- (トピック教材:あまりのあるわり算の学習後)
- 4年「注文するバスの数は何台?」
- (トピック教材:あまりのあるわり算の学習後)
- 5年「ケーキを分けよう」
- (トピック教材:整数÷整数=分数,異分母分数の加減法の学習後)
- 5年「社会科新聞のレイアウトを考えよう」
- (合同な図形)
- 6年「結婚式の座席表を作ろう」
- (トピック教材:対称な図形の学習後)
- 6年「交通ボランティアさんへの手紙」
- (トピック教材:円や不定形の面積の学習後)
- 6年「土地の分け方を考えよう」
- (分数のかけ算)
- ルール作り問題
- 1年「ドングリゲームのけっちゃくは?」
- (トピック教材:長さの学習後)
- 2年「サッカー大会の順位を決めよう」
- (表とグラフ)
- 3年「運動会の得点を考えよう」
- (トピック教材:□を使った式の学習後)
- 4年「的当てで遊ぼう」
- (トピック教材:面積,わり算の学習後)
- 5年「アレンジ自由自在・空き缶タワー」
- (トピック教材:単位量あたりの考えの学習後)
- 6年「大縄ジャンプの記録を振り返ろう」
- (トピック教材:比や比例(反比例)の学習後)
- 選択問題
- 1年「どうぶつとたのしくふれあおう」
- (トピック教材:グラフの素地の学習)
- 2年「空き缶タワー」
- (トピック教材:2桁のたし算の学習後)
- 3年「図書室に購入する本を選ぼう」
- (棒グラフと表)
- 4年「ランチメニューを1つ減らしたい」
- (データの分類整理)
- 5年「ナイスベーカリーはどこかな」
- (トピック教材:割合の学習後)
- 6年「紙コプター大会をしよう」
- (データの調べ方)
- 計画・設計問題
- 1年「バッジを作ろう」
- (かたちづくり)
- 2年「サラダを作ろう」
- (2桁の筆算)
- 2年「消しゴムの形について考えよう」
- (トピック教材:はこの形の学習後)
- 3年「遊園地で遊ぶ計画を立てよう」
- (トピック教材:時刻・時間の学習後)
- 3年「夏休みの生活を考えよう」
- (時刻と時間)
- 4年「とび箱の形について考えよう」
- (トピック教材:垂直,平行と四角形の学習後)
- 5年「オリジナルのペン立てを作ろう」
- (角柱と円柱)
- 5年「野外学習の散策の計画を立てよう」
- (速さ)
- 6年「よく売れる1Lの容器を作ろう」
- (トピック教材:立体の体積の学習後)
はじめに
元日本体育大学大学院教育学研究科 /島田 功
広島大学大学院人間社会科学研究科 /馬場 卓也
本書を手に取られた皆さんは,「オープンエンドアプローチ」という言葉を聞いたことはありますか。この言葉は島田茂(1977)の著書にまとめられたもので,既習の知識・技能・考え方をいろいろに組み合わせて,正答が多様にある問題を解決する学習を意味しています。このような問題を「オープンエンドな問題」といいます。これに社会性を取り入れたものを「社会的オープンエンドな問題」といい,馬場(2009)により主張されました。社会性というのは,子どもたちの社会に起こる問題を指します。このような問題を取り上げるとその子どもなりの多様な価値観と数学的モデル(式など)が表出します。子どもたちは各々の価値観と数学的モデルについて発表し意見交流を行い,学び合う学習ができるのです。また,数学的モデルを表現する際に「数学的な見方・考え方」が働きます。この本で取り上げている「的当て問題」を見ると,平均の考えや面積の考えなどの「数学的な見方・考え方」が働いて式が表現されていることがわかります。「数学的な見方・考え方」についても学び合えるのです。
令和4年度全国学力・学習状況調査 算数の中に,この価値観と数学的モデルにかかわる問題があります。アンケート調査の結果を円グラフ(1年生が希望する遊び,6年生が希望する遊び,1年生と6年生が希望する遊び)に整理し,その円グラフを見て1年生も6年生も楽しめる交流会の遊びを決める問題です。この問題に対する授業アイデア例を見ると,ある男の子が「輪投げがよいと思います」「1年生の気持ちを大切にしたいので,1年生の円グラフを見たら,輪投げの割合が一番大きかったからです」と答えています。この男の子は,1年生思いという価値観に基づいて円グラフを解釈していることになります。一方,ある女の子は「私は1年生と6年生の両方の気持ちを大切にしたいので,1年生と6年生の円グラフを見ました。縄跳びは25.8%と,割合が一番大きいので,縄とびに決めるとよいと思います」と答えています。この考えは,1年生と6年生の参加する全員を平等に扱いたいという価値観に基づいて円グラフを解釈していることになります。このようにそれぞれの立場(価値観)により,使われる数学的モデルが変わってくるのです。どれもが正解で結果はオープンエンドになり,クラスで一つに決めるためには話合いをして決めていくことになります。こうした力は,これからの社会ではますます必要になってきます。実際,その人の価値観に基づいて数学が使われる場面を社会の中で多数見つけることができるでしょう。本書では,そのような授業例を1年生から6年生まで実際に授業を行いまとめましたので,授業で用いて感想を聞かせてください。
次ページより,国立教育政策研究所 教育課程調査官の笠井健一先生が推薦文をお寄せくださいました。ここに厚く御礼申し上げます。また,明治図書の赤木恭平様には,本書をまとめるにあたり多大なるご尽力をいただきました。合わせて御礼申し上げます。
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- 明治図書
- オープンエンドアプローチの授業は、まとめの仕方が難しいので、その点をより具体的に示していただけると、さらに役立つと感じた。2023/1/2240代・小学校管理職