23日の毎日新聞の記事によると、太宰治の『人間失格』が異例の復活を遂げているようです。ヒットとなっているのは集英社文庫版で、同社の大ヒットコミック『DEATH NOTE』を描いた漫画家・小畑健さんが表紙を手がけたところ、通常は1〜2万部といわれる夏休み中の出荷数が、9万部にまで跳ね上がっています。
コミックとのコラボ? で中高生にアピール
新しい表紙はコミック風もしくはライトノベル風に仕上がっていて、若者の支持を集めたのがヒットの要因といえそうです。若い人は本を読まないというイメージをなんとなく持ってしまいがちですが、実際は携帯小説やライトノベルなどで結構活字に触れているので、そのような層を上手く古典へと誘導できたのかもしれません。今回のアイデアは若手編集者のものだそうですが、少しアプローチを工夫するだけで、中高生にも古典的名作をアピールできた好例といえるのではないでしょうか。
新訳で生まれ変わる世界的名作たち
さらに最近書店をにぎわしている古典的名作があります。それはなんと、ロシア文学の中でも屈指の長さをほこるドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です。光文社古典新訳文庫のオフィシャルページによると、新訳版『カラマーゾフの兄弟』が、5巻累計で26万5千部を突破したようです。最近のAmazonのランキングでも常に上位にランクインしています。
『カラマーゾフの兄弟』は、ミステリーや男女の愛憎、宗教、国家、テロなど現代にも通じるテーマが散りばめられた名作ですが、とにかく長くて難解。私もかつて挑戦したことがありますが、ロシア人特有の複雑で長い登場人物名に慣れず挫折してしまいました。今回の新訳では日本語としての読みやすさにこだわったようで、原作の面白さをストレートに伝えられたことが良かったのかもしれません。
光文社古典新訳文庫では、他にも世界の名作を平易な言葉に置き換えた新訳で紹介しており、『目玉の話』(眼球譚)や『ちいさな王子』(星の王子様)などタイトルの変わりようを見ているだけでも、訳者の冒険ぶりがうかがえる気がします。
2つのヒットに共通しているのは、「最近の若者は活字を読まない」と簡単に決めつけない視線ではないでしょうか。少し目線を変える努力をすることで、子どもたちを古典に引きつけることは十分に可能だといえそうです。教室や家庭でも、上手く知的好奇心を喚起することで、子どもたちの読書生活が充実していくのかもしれませんね。
- Amazonでも人気 新訳「カラマーゾフの兄弟」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0708/22/news078.html
- 新訳「カラマーゾフの兄弟」 売った「仕掛け」
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20070724bk07.htm
新訳文庫もいいですよね。時代に合わせた新訳で名作が広く読まれるようになるのはとてもいいことだと思います。
あまり本を読まない層に良いきっかけとなるのは良いことだと思いますが、これが行き過ぎて、名作に萌えアニメのカバーなんて組み合わせが出現すると恐ろしいですね・・・。
「舞姫」「或る女」あたりや、倒錯気味に「走れメロス」とかでしょうか(笑)
集英社は昔から吉野朔実 やわたせけいぞうを、漱石で起用していましたよね。やっと戦略が実ったというところでしょうか。
先生と「私」の同性愛説を現代的に描いた感じでしたね。
ただ、先生が独身だという設定がちょっと・・・
先生の奥さんをめぐって、先生と「私」の間にも実は三角関係が生じているという(三角関係が連鎖している)、小森陽一の説が好きだったので。