子どもは理科の実験が大好き!という説もありますが、実験とはなかなか大変なもの。事故が起こったり、班の人に任せて見ているだけの子どもがいたり、演示実験が見えづらくて実験が嫌いになってしまうなどの問題もつきもの。先生にとっても実験の準備や廃液処理などの片付けは大変です。
そんな問題が一挙に解決できるかもしれない、注目の実験の方法があります。その名もマイクロスケール実験。
8月27日の毎日新聞の記事でも紹介されていますが、マイクロスケール実験とは、実験器具を簡単なものにする、使う試薬の量を減らすなど実験のスケールを小さくすることにより、実験廃棄物の減量や手間ひまの軽減などさまざまな効果が期待できる実験のことです。
たとえば、平成17年には実際に、京都教育大学附属京都中学校において水の電気分解の実験(PDF)が行われましたが、この実験では電極としてステンレス線(ステンレス製マチ針でも代用可)を使ったり、H型電解装置の代わりにポリスポイトを使うことによって、実験器具にかかる費用や、電解質として必要な水酸化ナトリウム溶液の量を減らしています。
しかも、この実験では2人1組という少人数グループ、10分間という短時間で実験を行えたということです。また、実験後のアンケートでは、実験に参加した生徒の83%が実験器具を使いやすい、89%が分かりやすいと回答しています。
東北大学名誉教授の荻野和子先生によると、マイクロスケール実験の効果としては
- 試薬の節減
- 実験廃棄物の少量化
- 省資源、省エネルギー
- 安全性の確保:危険が少なく、事故が防止できる
- 実験環境の改善
- 実験時間の短縮
- 経費の節減
- 以上のことを通して環境問題についての生徒の関心を深めることができる
- 1グループの人数が少ないので一人ひとりが積極的に実験に参加する
- 少量しか使わないので、高価あるいは希少な試料を実験に使うことが可能
- 小さいガラス器具は破損しにくい
などがあるようです。わざわざ理科室に行かなくても済むし、事故防止にも役立つというのだから、まさにいいことづくめ。環境問題にも関心が高まっている今、教育現場でも、このような環境に配慮した取り組みも必要となってくるのではないでしょうか。
このほかにもマイクロスケール実験には、水溶液の性質、酸・塩基の学習などにおいても実験例があります。しかも、中国や米国などマイクロスケール実験研究グループのサイトによると、海外では以前からすでにマイクロスケール実験が普及しているそうです。
実験器具の開発が遅れているなどの問題もあり、マイクロスケール実験は、海外のようには日本の教育現場になかなか広まっていないのが現状ですが、最近でも京都教育大学での実験体験講座など、マイクロスケール実験を知ってもらうための努力がなされています。普及するまでには時間がかかりそうですが、教育現場での新しい試みとして期待ができそうです。
- フォーラムマイクロスケール化学(マイクロスケール実験研究グループ)
http://science.icu.ac.jp/MCE/ - マイクロスケール実験の部屋(京都教育大学 芝原研究室)
http://natsci.kyokyo-u.ac.jp/~shiba/index.html
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- 名無しさん
- 2007/9/5 17:33:12
とてもよい試みだと思いますが、理科機器メーカー涙目ですね・・・。 -
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- 名無しさん
- 2007/9/7 12:18:26
よくわからないんですけど、このせいで、実験への理解が深まらないということはないのでしょうか。小さくするだけではないんですよね…?