小学生や中学生のころ、歴史の資料集などに掲載されているこの絵巻物を見てワクワクした記憶はありませんか? さまざまな動物たちが水浴びをし、追いかけっこをし、時には宴会を催したかと思えば、今度は神妙にお経を唱えている…。そう、あの国宝「鳥獣人物戯画絵巻」が今月3日から、六本木のサントリー美術館にて公開されています。
私たちが一番親しみのある日本美術! というぐらい誰でも知っているこの絵巻物。京都あたりに行けば、「鳥獣戯画」の一場面をプリントしたポストカードやハンカチ、湯のみ、コースターなどのグッズが土産物屋に並んでいますよね。何年か前には、この絵巻物の登場動物? たちがストラップになって、ペットボトルのお茶のおまけとしてついていたこともありました。
さて、このように人々に親しまれている「鳥獣戯画」ですが、実に謎の多い絵巻物でもあるのです。
現存するのは、甲、乙、丙、丁の4巻。最も知られているのは甲巻でしょうか。ウサギとカエルが相撲を取っている場面はあまりにも有名です。制作時期は12〜13世紀(平安時代末期〜鎌倉時代初期)と言われていますが、正確な年代は不明だとか。作者も、長らく鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)と伝えられて来ましたが、それを示す資料はなく、よって明快な根拠はないとのこと。各巻の画風の違いから、複数の絵師によって書かれたとする説もあります。
そして、これらは当初から4巻セットだったのではなく、さまざまな改変を経て現在の姿になったと考えられています。要するに、当初の姿とは全く違うということですね。それを証明するかのごとく、現存の絵巻には不自然な継ぎ目が残り、描かれている物語は突然始まったかと思えば、途中でガラリと場面が変わり、そして唐突に終わりを告げています。
今回の「鳥獣戯画がやってきた!」展は、京都・栂尾(とがのお)の高山寺に所蔵されている4巻のほかに、本体から切り離されたと思われる断簡や、現存の絵巻にはない場面が含まれている後世の模本なども合わせて展示しているようです。これらが一堂に会することによって、本来の「鳥獣戯画」の一端が見えてくるかもしれません。
この大変興味深い展覧会、大行列は必至ですが、それを覚悟してでも行ってみる価値はあるのではないでしょうか!?
子ども心に感動したなぁ。