きょういくじん会議
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ニート対策でイギリスの義務教育2年間延長へ
kyoikujin
2007/11/24 掲載

 16日の朝日新聞の記事によると、英国のブラウン政権は6日、義務教育年齢を18歳に引き上げる方針を打ち出したとのこと。延長される2年間で若者は教室で学科を学習したり、職業訓練を受けたりする。「ニート」(※)対策でもあるとのことで、違反には保護者や本人への罰金も検討しているようだ。

 英国のこれまでの義務教育年限は、5〜16歳の11年間。初等教育6年(5〜11歳)、中等教育5年(11〜16歳)となっていた。これは1996年の教育法によって定められているが、「保護者は子どもに教育を受けさせる義務がある。ただし、就学義務ではない。」とされており、親には「子どもに教育を受けさせる義務」はあるが、「学校に行かせる義務」はないとしている。日本の義務教育・学校教育法とは異質なものと言えよう。
 ちなみに、日本では学校教育法第91条で、「第22条第1項又は第39条第1項の規定による義務履行の督促を受け、なお履行しない者は、これを10万円以下の罰金に処する」と学校に就学させない場合の罰則が定められている。

 イギリス以外にも、今年7月にはロシアでロシア連邦教育法(表示は改正前)が改正され、これまで9年間だった義務教育が2年間延長されていた(後期中等教育。これまでは任意)。これはEUの「ボローニャ宣言」(英文・PDF)を意識したものと言われている。ボローニャ宣言とは共通の学位システムの導入などを含む教育改革についてヨーロッパ29カ国が1999年に合意したもので、各国で理解しやすく比較可能な学位システムを導入してその質を保証し、世界に通じるものにしようというもの。主要参加国の義務教育年数は10年・11年が多いが、そこからさらに増やす動きが見られる。

 イギリスとは教育制度の枠組みに違う部分があり、それをそのまま日本に当てはめて考えることは出来ないが、日本においても、授業時数の増加だけではなく、義務教育の枠組みをも視野に入れた検討が求められているのかもしれない。義務教育年数を増やすことに対しては、家庭環境の問題、費用の問題もあり、「それほどの効果は望めない」とその効果自体を疑問視する声も根強くある。包括的な議論・検討が期待される。

※「ニート」は1990年末、英国のブレア政権下で生まれた言葉であるが、イギリスの「ニート」は今現在日本で使われているような定義ではない。イギリスでは義務教育(16歳まで)を終えた後、(1)上級学校に進む(2)職業訓練学校に進む(3)就職するという進路があるが、そのいずれでもないもの、つまり働かず、学校にも通わず、職業訓練も受けていない10代の若者を指す。その範囲は16〜18歳となっており、35歳ぐらいまでを含んでいるとされる日本のそれとは異質である。日本で「ニート」という言葉が広まった経緯については「そんなにいるわけない! ニート<85万人>の大嘘」『論争 格差社会』(文春新書)に詳しい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2007/11/26 18:00:59
    日本でも「6・3・3・4」制の見直し議論はありますが、義務教育の延長とは大きな変更ですね。
    日本だと全入時代なので進学したければ誰でも可能だし、進学率は90%とそもそも高いのであまり意味はなさそうな気がします。
    むしろ、進学を希望しない10%の生徒の自由を奪うことになってしまいそうです。
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