既報のとおり、PISAの調査結果が発表され、日本の読解力の順位は14位から15位へと下がった。新たに調査に参加した国もあるため、日本の子どもたちの読解力が下がったと単純に結論づけることはできないが、ランキング表を見ていると日本と同条件にありながらも、急激に順位を上げ続ける国があることに気がつく。今回、読解力の平均得点で9位をマークしたポーランドだ。
ポーランドはPISA2000調査時には、総合読解力の順位は24位で、8位の日本とは約50点の点差がついていた。しかし、2003年調査時には16位へと順位を上げ、14位の日本に迫っている。そして、今回の調査ではついに日本を抜き9位へランクイン。ベスト10へと名を連ねた。
参加国が増えていくに従い日本は順位を下げ続けているが、ポーランドの順位は逆に上がり続けている。この差はどこから生まれるのだろうか。
OECD東京センターのホームページに掲載されているアンヘル・グリアOECD事務総長のスピーチ原稿(PDF)では、ポーランドが躍進した理由は成績下位層の得点向上にあると分析されている。これは、ポーランドの教育制度改革に一因があるようだ。
ポーランドの教育システムは、16歳の時点で生徒を振り分け、基礎職業学校や総合高等学校へと進路を限定するもの。日本の高校生と同じ年代で、受けられる教育の質や就職できる職種に大きな差がついてしまうことになる。早期に振り分けが行われるので、生徒は地域や親の経済的背景に影響を受けやすく、階層は固定化されがちだ。ポーランドはこの振り分けの時期を1年遅らせるため、1999年に8-4制から6-3-3制へ移行した。この結果2003年の調査では、学校間の成績のばらつきは50.7%から14.9%へ減少し、ポーランドは現在、最も学校間の差が少ない国の1つとなったという。学校の差が縮まった結果、上位グループの得点も下がることなく、OECD参加国の中で2番目の伸びを見せた。
つまり、高等教育の選択時期の延長がポーランド躍進の要因だったといえる。背景には高いGDP成長率もあったのだろうが、1990年に比べると基礎職業学校に進学する生徒は29%まで減り、反対に一番グレードの高い総合高等学校へ進学する生徒は168%まで増えた。大学にあたるPost-secondary Schoolに通う学生も269%まで増えている。
ポーランドの躍進は、同様の早期選別システムをとるヨーロッパ諸国に対して重要な政策課題を示したが、グリア氏が分析するように、下位層が少なく、大学全入時代を迎える日本にとってはそれほど重要ではないのかもしれない。
それでもポーランドの伸びは目覚しく、一概に無視のできるものではないだろう。日本においても経済的要因による教育機会の不均等さや、地域による学力の差は問題となりつつあるように思える。ポーランドでも、教師への講習、IT教育の普及、生活に根ざした教育の推進など日本と似た取り組みが既に実施されており、日本の教育と比較することで読解力を向上させる有効なヒントを得られるのではないだろうか。
- OPERATIONAL PROGRAMME "EDUCATION AND COMPETENCE" NATIONAL DEVELOPMENT PLAN 2007-2013 (PDF)
http://www.men.gov.pl/menis_en/education/operational_programme.pdf
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気になります。
マイスター制度の名残だと聞いたことがあります。徒弟制度が根付いているから、親が職人だと子も職人を目指すというか、目指さざるを得ない感じなのでは。ただ、ドイツなどは何歳になっても大学に入れるし、一度離れてもいつでも復学できるので、日本ほど大学入試にこだわらないのでしょう。就職に関係しないし。
ポーランドは大学出ないと就職できなくなりつつあるから、大学入試ブームが起きていて、ヨーロッパでも少し事情が特殊なんだそうです。