5日、トーハンによる2007年の年間ベストセラーが発表されました。
文芸部門の上位3位を「ケータイ小説」の書籍が独占したことが、波紋を投げかけています。
ケータイ小説とは
「ケータイ小説」とは、携帯電話サイトで閲覧・執筆される小説を総称した言葉です。主に10代から20代の女性が購読しており、同世代のアマチュア作家たちの投稿作品が掲載されているのが従来の出版物との大きな違いです。代表的なサイトとしては「魔法のiらんど」の「魔法の図書館」などがあります。
今回のベストセラーで文芸部門1位の「恋空」は、2006年10月に発売され、たったひと月で100万部を突破したダブルミリオンセラー。今年11月に映画化され、公開ひと月余りで興行収入30億を突破しています。
ケータイ小説、賛否両論
ケータイ小説は文学性に乏しいという意見が多く見られます。根拠は、心情の掘り下げや情景描写が欠けていること、構成・展開に無理が見られること、安易な性描写・暴力描写が多いこと、また、誤字脱字や文法上の不備が少なくないことなどが挙げられます。
ケータイ小説がベストセラーとなったのには、本に興味のない女子中・高生という新しい市場を開拓したことが大きいでしょう。ですが、「文学的に評価されること」と「市場で売れること」とは、必ずしも相関性があるとは限らないとして、ケータイ小説は文学ではなく、一過性の大衆文化に過ぎないと捉える人たちもいるようです。
一方で、作家・評論家の猪瀬直樹氏は日経BPネットのコラムで「ケータイ小説は、近代日本文学の伝統の流れの延長に位置するものなのだ」と述べています。女学生による作品が広く読者の支持を集めるという現象は明治時代にも起きており、私小説の発生に影響を与えたといいます。
日本文学はどこへ?
モバイルリサーチによる高校生のケータイ利用実態調査によると、全体で37.4%、女子だけならば53%もの高校生がケータイ小説を読んでいるそうです。
中高年層からは特にケータイ小説には否定的な意見が多いですが、中学・高校生からは圧倒的な支持を受けていることは事実です。「ケータイ小説って何だ、ケッタイ小説か」と足蹴にせず、一度読んでみると「今の子どもたち」が見えてくるかもしれません。
- ケータイ小説とは(出版科学研究所)
http://www.ajpea.or.jp/column/column_200701.htm#0213 - 活字文化衰退? 文字・活字文化推進機構設立へ(きょういくじん会議)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/kaigi/?id=20070350
なんというか、今の子たちは精神構造が違う気がして怖いです。
文体も、表現の稚拙さも目立ちますが、口語で書かれているため、リアリティがあります。
本好きという方にはとても受けるような内容ではないとは思いますが、一度、違う目線で読んでみてもいいんじゃないかなぁと思いました。