先日結果が公表された、PISA2006。「数学的リテラシー」分野の日本の順位は、前回調査の6位から10位に後退、平均得点も下がったことが明らかになった。今回で3回目を迎えたPISAだが、新聞等の報道は、日本を中心とした各国の順位や点数に関する話題が中心で、どのようなねらいで、どのような問題が出題されているのかなど、調査内容はあまり顧みられていない。
「数学的リテラシー」って何?
まず、この「数学的リテラシー」とはいったい何なのか。
主催者であるOECDによる定義は、
数学が世界で果たす役割を見つけ、理解し、現在及び将来の個人の生活、職業生活、友人や家族や親族との社会生活、建設的で関心を持った思慮深い市民としての生活において確実な数学的根拠にもとづき判断を行い、数学に携わる能力
と、何とも荘厳かつ難解だ。
新聞報道等では、簡単に「(数学的な)応用力」とされることが多いが、OECDの定義を加味すると、“生活への”応用力であるという面が重要と言えるだろう。
どんな問題で「数学的リテラシー」を診断しているの?
それでは、この「数学的リテラシー」をどのような問題で診断しているのか。
今回結果が公表されたPISA2006の「数学的リテラシー」分野の問題は、2009年の調査でも同一問題の出題があるため、一切公表されていないが、前回のPISA2003の公表問題からその一端をうかがい知ることができる。
たとえば、「輸出に関する問題」と題された問題。
ある国の輸出額や品目についての棒グラフと円グラフから数値を読み取り、簡単な計算をすれば答えが求められる問題だ。
数学的には、日本の現行教育課程では小学校4、5年生の算数で学習する小数や百分率を理解していれば解ける問題で、ポイントはむしろ、グラフの単位を正しく読み取れるか、2つのグラフの関連を理解できるか、といった社会科でよく問われる「資料(グラフ)の読み取り」にあると言える。
また、同じく統計グラフに関わる「盗難事件」と題された問題は、盗難に関する棒グラフについての説明文が適切であるか否かを判断するというもの。ここでは、資料や文章を読み取るだけでなく、さらに一歩踏み込んで、その適切性を判断し、判断の根拠を説明することが求められている。
新学習指導要領への影響
上記の2題はいずれも、広く「統計」に関わる内容の問題であるが、現行の学習指導要領から、中学校数学科では、統計に関わる内容は一切扱われていない。しかし、告示を控えた新学習指導要領では一転、統計や確率に関する「資料の活用(仮)」という新領域が設けられる予定で、PISAの結果不振がその一因と見られている。
- PISA2003「数学的リテラシー」分野の公表問題(文部科学省) ※PDF
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05071101/001.pdf

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- 名無しさん
- 2007/12/18 15:32:38
資料活用問題はPISAの前から流行ってましたが、やはり読み取り中心だったですからね。