19日、六本木ヒルズの森美術館で知られる森ビル株式会社が「〜東京・NY・ロンドン・パリ・上海〜 国際都市アート意識調査」の結果を発表しました。それによると、この5都市中一番美術館に行かないのは東京の人だとわかりました。
東京人の美術館来訪は年平均1.9回
25日の時事通信の記事などで取り上げられているように、年1回以上美術館を訪れる人の割合と年間平均訪問回数は、東京が最下位で75.7%と1.9回。トップはロンドンで91.0%と3.9回でした。また、「美術館に求めるもの」という項目では、東京は比較的受け身な回答である「気分転換」が一番多く、ほかの都市で高かった、積極的な回答(「教養」「ビジネスにおけるヒントを得るため」など)は伸び悩みました。
東京には美術館が多いというイメージがありますが、国際的にはアート意識の低い都市だという、この結果。図工や美術の指導要領には「表現」「鑑賞」の二大柱があり、小学校・中学校ではだれでも美術の鑑賞方法を学んできたはずなのに、なぜでしょうか? 東京とロンドンで、何が違うのでしょうか?
日本とイギリス、美術教育の違い
日本では高校以上への進学を考えた場合、受験に影響しない美術などの技能教科は軽視されがちです。また行事や補習などで時間数が調整されやすく、生徒たちのモチベーションも上がりにくいというもの。
ところがイギリスでは美術の授業や試験は日本よりも重視されており、その内容も、より批評的思考を養うものだと言われています。低学年のころから絵を見て感じたことを積極的に表現させ、また、自画像を描かせる場合にも自己の内面について考察させたり、アイデンティティについて討論させたりというステップを踏むそうです。「鑑賞」と「表現」が一体化するように指導しているため、自然と美術に対する捉え方も哲学的になり、ただ「眺める」というよりも深い意味での鑑賞が可能になるのかもしれません。もしかしたら、「PISA型読解力」の涵養にも、間接的に効果があるのかも…?
※PISA型読解力の定義…「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」
日本の美術教育のこれから
もちろん、日本でも様々な試みがなされています。東京の世田谷美術館では、区内の小中学校の児童生徒を受け入れ、美術鑑賞教室を開いています。また、こちらのブログでは愛知県の小学校と美術館が連携する試みが紹介されています。
社会全体が停滞ムードに陥り、暗いニュースの多いご時世にこそ、芸術に触れることで自分をリフレッシュし、高めるという「美術への積極なアプローチ」が求められているのかもしれません。
学力低下・言葉の力・科学的リテラシーなどなど、新指導要領ではますます主要教科に重心が置かれそうですが、「図工」や「美術」も大切にしたいものです。
- 国際アート意識調査結果(PDFファイル)(森ビル)
http://www.mori.co.jp/companyInfo/press/res/2007121910103806887.pdf
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入試に必要な教科中心に勉強するというのは仕方ないかもしれませんが、美術で培う表現力も重要だと思います。
展示方法にも工夫がほしいなと思いました。
ほかの方のおっしゃるように、金額の問題が一番だと思います。
美術館と商業主義は切り離してほしい。