きょういくじん会議
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大人も感動の名作揃い! ニューベリー賞、コルデコット賞
kyoikujin #93
2008/2/4 掲載
Where the Wild Things Are

 今月16日、第138回直木賞・芥川賞の受賞作が発表され、文学界を賑わせたのはみなさんも記憶に新しいことと思います。
 ところで、毎年アメリカでも同じ時期に権威ある二つの文学賞が発表されているのをご存知でしょうか?

 本の表紙にぺたりと貼られた、燦然と輝く金や銀のメダル。それこそが「ニューベリー賞」、もしくは「コルデコット賞」の証です。
 しかしこれらの栄誉を受けるのは、日本の直木賞や芥川賞の選考対象になるような「大人」向けの作品ではありません。対象となるのは子どもたちのために作られた、素晴らしい児童文学絵本なのです。

ニューベリー賞(The Newbery Medal)

 18世紀イギリスの出版業者、ジョン・ニューベリー(世界初の児童書を出版した人物)の名を冠した、アメリカ児童文学界における最高峰の賞です。
 対象はアメリカ国籍、又はアメリカ在住の作家によって前年に出版された児童文学作品。テーマや構成、文章の秀逸さなどの文学的な評価に加えて、子どもの心を惹きつけられるかどうかが選考基準になっているようです。

The Voyages of Doctor Dolittle

 賞にはメダル(金賞)とオナー(銀賞)があり、メダルに選ばれるのは数ある作品のうちの1冊のみ。過去のメダルやオナーには、『ドリトル先生航海記』『大草原の小さな家』『エルマーのぼうけん』といった日本の小学校の図書室にも置いてあるような名作を始め、スタジオジブリによってアニメ化された『ゲド戦記』や、現在ちょうど日本で公開中の『テラビシアにかける橋』などがズラリと並びます。

コルデコット賞(The Caldecott Medal)

The Little House

 ニューベリー賞がアメリカ児童文学賞のトップならば、こちらは絵本に与えられるアメリカ最大の賞。19世紀イギリスを代表する天才絵本作家、ランドルフ・コルデコット(現代絵本の原点を作った人物)の業績を讃えて創設されました。
 対象作品などはニューベリー賞と同様ですが、大きく異なるのは選考基準。ニューベリー賞が文学性を重視するのに対し、コルデコット賞では絵の表現力を一番に問われます。絵が流れるように物語の世界を成していることがポイント。ゆえにコルデコット賞のメダルやオナーには、全く文字のない美しい画集のような絵本も少なくありません。

Swimmy

 どちらかと言うと日本ではニューベリー賞よりも有名で、数多くの受賞作が翻訳出版されています。『ちいさいおうち』『スイミー』『かいじゅうたちのいるところ』などは翻訳本が出版されて以来、日本の子どもたちにも愛され続け、今では絵本の定番になっていますよね。

 これら二つの賞は、どちらも全米図書館協会が主催しており、1年に1度(例年1月)その年の受賞作が発表されています。ちなみに受賞者に賞金などは一切付与されませんが、受賞後は本の版が途切れなくなるほどの影響力があるとか。映画界でいうアカデミー賞のようなものでしょうか。

 最近では洋書を扱う書店も随分増えています。もし本の表紙にキラリと光るステッカーが貼られていたら、ぜひ手にとってみてください。読めば思わず童心に帰ってしまうような優れた児童書であるということは、そのメダルが証明してくれています。
 特に、もし幼い頃に日本語で読んだ懐かしの作品を見つけたら、原書で再読してみることを強くオススメします。きっと、英文ならではの美しい響きやニュアンス、それから改めて見る生き生きとした挿絵たちにまた新しい感動を発見できるはずです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
3件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2008/2/4 11:32:56
    記事に出てくる本、名作ばかりですね。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2008/2/4 12:40:19
    ニューベリー賞を受賞した作品は、大人でも楽しめる名作が多いので、社会人でも、英語を勉強したい人には、原作を読むのもオススメです!
    • 3
    • 名無しさん
    • 2008/2/5 11:03:18
    懐かしいです。久々に読みたくなりますね。
    絵本は、子どもの頃に読んだ時はすごく簡単なお話だと思っていたのに、大人になってから読むといろいろと考えさせられたりするものが多いです。
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