上野動物園のジャイアントパンダ「リンリン」が死亡し、国内のパンダは、神戸市立王子動物園と和歌山県の「アドベンチャーワールド」にいる計8頭になりました。6日から予定されている胡錦濤国家主席来日時に合意が成立するよう、日本政府が中国政府にパンダの借り受けを要請しているというニュースも聞かれますが、上野動物園に再びパンダがやってくる日は訪れるのでしょうか…。
野生のパンダは中国だけに生息しており、現在約1,600頭と言われています。1970年代に本格的な保護が始まった時は1,000頭と言われていましたので、約1.6倍にまで増えたことになります。それでもまだ絶滅危惧種であることに変わりはなく、ワシントン条約で国際的な取引が規制されています(繁殖研究など学術目的の取引は認められています)。パンダの保護活動が推進される一方で、生息地域の開発が進むなど、矛盾した動きも見られます。
パンダは野生においても繁殖が難しい動物と言われています。人口繁殖はさらに難しく、リンリンについても2世誕生が期待されましたが実現しませんでした。現在、中国の保護センターや世界中の動物園などで約200頭のパンダが飼育されており、繁殖の研究も進められています。
パンダの繁殖に関しては、前述のアドベンチャーワールドで飼育されている「メイメイ」が注目を集めているようです。4月30日の産経新聞の記事で詳しく紹介されています。メイメイがこれまでに10頭も出産していることと、双子を育てていることが注目の理由です。特に、パンダが双子を両方とも育てるのはかなり珍しいとのこと。野生のパンダは、双子が生まれても体の大きな1頭だけを育てるからです。メイメイは日本で2度双子を出産し、2度とも双子の両方を育てています。アドベンチャーワールドでは、パンダが子育てに集中できるよう、環境を整えることに力を入れているようです。
ただ、野生のパンダが双子のうち生命力の強い1頭しか育てないことを考えると、メイメイの子育てが野生の法則に反しており、「飼育パンダ」になりきってしまっているからでは、という余計な心配もしてしまいます。メイメイも中国のパンダ繁殖センターで生まれ育ったパンダなので、そのことが関係しているのかもしれません。
とは言え、メイメイの「双子の子育て」がパンダ繁殖の謎を解き明かす研究の一助となり、繁殖の究極の目的である「野生のパンダを増やすこと」に役立ってくれたらと期待は膨らみます。
さて、最近はチベット情勢や北京五輪が話題になっている中国ですが、パンダを切り口としてこの国について学んでみるのもいいかもしれませんね。特に1970年代から現在までのパンダをめぐる日本を含めた各国との関係を調べてみると、中国の外交ということに関して、また違った面が見えてくるのではないでしょうか。
- 上野動物園
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/ - 神戸市立王子動物園
http://www.ojizoo.jp/ - アドベンチャーワールド
http://aws-s.com/index2.html
よかったです。