きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
ゲームは子どもの社会性をはぐくむ? 米国の調査
kyoikujin
2008/9/24 掲載
Wii

 子どもがゲームばかりしていて手を焼いているという保護者の方は多いかもしれないが、ゲームが子どもに及ぼす影響は悪いものばかりなのだろうか。9月17日の産経新聞の記事によると、米国の社会調査で定評のあるピュー・リサーチセンターが全米の12〜17歳の約1100人の子どもとその保護者を対象に行った調査で、「やりかたしだいでは子どもはテレビゲームによって社会性をはぐくむ」という結果が発表されたそうだ。

友達との交流で社会性がはぐくまれる?

 ピュー・リサーチセンターの調査では、実際には1人でゲームをするよりは、友達とゲームをする子どもの方が多いということからも、友達との関係の中で社会性がはぐくまれることがあり、悪影響ばかりではないという結果が示されている。友達とゲームをすれば、たしかに、一緒に遊ぶ中で互いを尊敬し合ったり、注意し合ったりすることが起こるだろう。かねてから、ゲームの貸し借りなどによりコミュニケーションがうまれ、社会性をはぐくめるとした説もあった。この調査について、1人でゲームをする場合に社会性にどのような影響があるのかということは疑問が残るが、「ゲーム」=「社会性が低くなる」と言い切ってしまうことは難しそうだ。

オンラインゲームと社会性

 では、オンラインゲームが与える子どもの社会性への影響はどうだろうか。オンラインゲームは、インターネットを使って複数の人が同時に参加して行われるゲームなので、友達と隣でプレイしたり、貸し借りをするような一般のテレビゲームとは少し趣向が異なる。
 近年、韓国や中国などで、「オンラインゲーム依存症」と呼ばれる、社会生活を営めないほどオンラインゲームに熱中してしまう若者が増加している。ゲームのやりすぎで学校に行けなくなったり、過労死したりすることもあり、深刻な問題となっている。
 しかし、やりすぎなければオンラインゲームは気分転換になったり、昨年7月28日のITmediaの記事にあるように、日本でうつ状態の解消などにも使われた事例もあり、必ずしも負の側面ばかりとは言えない。

ゲームの内容にもよる?

 ゲーム内の暴力描写などが問題になる場合もある。先月、タイで、高校生の少年が「Grand Theft Auto IV」というゲームを真似て、タクシーの運転手を殺害するという事件が起きた。このGTAというゲームのシリーズは、以前から犯罪性、暴力性が高いとして注目を浴びており、この事件を受けてタイ政府は、現実の殺人などに繋がる危険性が高いとして「GTA」を含む10本のゲームを選別し、子どもにこれらのゲームを触れさせないよう注意が必要であるとの見解を示した。タイの販売店では、このゲームの販売を自粛したという。
 しかし、この事件についても、「高校生にもなって善悪の判断がつかないなら、なにもゲームのせいだけでなく、他のメディアによっても影響されうる」など、すぐに事件をゲームのせいにすることに否定的な見方もある。ゲームを規制することが表現の自由を奪ったり、ゲームが進化することの妨げになるという見方もあり、繊細な問題である。

 ゲームと言っても、さまざまなものがあり、悪影響をおよぼすか、むしろよい影響を与えるかは、ゲームを友達とするか1人でするか、またプレイする時間や内容にもよるので、ひとくくりにすることは難しい。とくに、まだ日本での研究はあまり進んでいないため、ゲームが子どもの社会性に及ぼす影響について断言できない。
 しかし、ここに挙げただけでもゲームにおける、正と負の両方の面が見え隠れする。現在も教育的価値の高いゲームを作ったり、ゲームを教育に生かそうという動きが各国で見られるが、ゲームと、生活習慣や社会性との関連性の研究が進み、ゲームの良い面を活かせる方向に進化することを期待したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2008/9/25 17:56:27
    今朝のズームインで、携帯ゲームを持ち寄って通信して遊ぶ若者の紹介をしていました。
    このような遊び方ならツールが電子機器に変わっただけで、トランプやボードゲームでわいわい遊んでいるのと本質的には変わらなく、家でひとりで黙って遊んでいるというゲームのイメージからは程遠い感じを受けました。
コメントの受付は終了しました。