きょういくじん会議
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大学淘汰の足音―大学合併、早期囲い込み
kyoikujin
2009/6/19 掲載
大淘汰時代の大学自立・活性化戦略

 10日の産経新聞の記事では、三重県の三重中京大、兵庫県の聖トマス大、神戸ファッション造形大の3大学が次年度の入学志願者の募集停止を報じています。このような大学の志願者の募集停止の動きは、学生数が定員割れがおきている「地方」の「単科」または「小規模」の大学に多い傾向のようです。景気の悪化の煽りを受けて、今後さらに「大学の淘汰」が加速することが懸念されます。

 一般的な大学入学年齢である18歳人口は、1992年の205万人をピークに減少傾向にあります。こうした一方で、大学設置基準が緩和された90年代以降、地方を中心に大学の新設が次々に行われました。平成20年度学校基本調査でも、平成10年度から20年度の間になんと121校もの大学が新たに誕生したことがわかります。新たに誕生した大学の多くは、地方につくられる傾向にあり、こうした大学での定員割れが、大学の経営を圧迫し、今回のような事態になるようで、今後一層、大学あり方が問われることになりそうです。

大学の経営効率化を目指し、合併支援も

 このような現状を受け、文科省の諮問機関の中央教育審議会の大学分科会では、大学同士の合併についての話し合いを始めています。このほど発表された第1次報告案では、全国の大学の37.1%が単年度の授業料収入で経常支出をまかなえない状況のほか、定員割れしている私立大学がほぼ半数の47.1%にのぼることなどが明らかとなりました。こうした大学がおかれている現状を踏まえ、今後合併支援のための具体的な経費補助や在学生、卒業生へのサポートなどについても話し合いが深まっていきそうです。
 大学の合併については、2011年の合併を目指して上智大学と聖母大学が協議を始めたほか、すでに昨年、慶応義塾大学と共立薬科大学、今年も関西学院大学と聖和大学の合併が行われた例があります。

新たな学生を囲い込み策―中高一貫校の設置

  「大学全入」ということばがまだまだ新鮮に聞こえていた90年代、大学側は学生の確保のために、受験生に対し広く門戸を開放してきました。そのひとつの例が受験形態の多様化です。併願が容易な大学入試センター試験の導入や、学力だけでなく、「人物重視」を掲げた入学者選抜法のAO入試の導入などが行われました。ところが近年、新たな学生の取り囲み策として、中高一貫校の新設が活発化しています。背景としては中等部からの6年間の囲い込みが可能であり、附属の大学へ内部進学させることもできるという点などにあるようです。以前のきょういくじん会議の記事でも、早稲田大学ほか私立学校の中高一貫校設立の話題に触れています。
 今後も18歳人口の増加がみられないことから、今後はより早期に生徒を囲い込むため小中一貫校についても、設立の機運が感じられます。これからますます学校間の生徒確保合戦が強まっていきそうです。

※記事内に一部不適切な部分がありました。お詫びして訂正いたします(2009.07.29)。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • taka
    • 2009/7/24 21:42:53
    ウエスレヤン大学が閉校するのですか?
    それは誤りだとおもいます。
    地域づくり学科を廃止して、経済学科を新設することだとおもいます。
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