きょういくじん会議
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新聞だからできることとは? 広がるNIEの取り組み
kyoikujin
2009/8/4 掲載
池上彰の新聞勉強術

 7月16日の毎日新聞は、日本新聞教育文化財団によって、今年度のNIE実践指定校536校が認定されたことを報じています。去る7月30,31日には長野県で第14回NIE全国大会も開催されました。以前も取り上げたことがあるNIE=Newspaper In Education(教育に新聞を)ですが、年々その名称は認知され、定着しつつあります。そして、NIEの取り組み自体もまた、広がりをみせています。

多教科で取り組みたいNIE

 そもそも、新聞を教育に取り入れる、という活動自体はとても簡単なことです。NIEなどという横文字で括られると、なにやら堅苦しく捉えられてしまうかもしれません。新聞記事の比較検討からクリティカル・リテラシー(批判的読解力)を育むというのが王道のNIEではあります。しかしそうした活動と同様に、新聞紙を破って、丸めて、投げて、集めて、埋めて、広げて、触れることもまた、NIEと言えます。一般的には、NIEは国語や社会の授業で行うものと思われているようですが、図工・美術の授業でもNIEはでき、多教科にわたって新聞を用いることで、新聞は子どもたちにとってより身近なものとなるでしょう。

「速い情報」としてのメディア・「遅い情報」としてのメディア

 「ことばと学びをひらく会」第2回大会(2008年10月16日) で、木まさき横浜国立大学教授は、こんなことを言っています。

 PISAのような実用的な言語能力、新聞なら写真と見出しとかは、わかりやすく人に伝えるということで「速い情報」といえます。物語は、人の心に立ち止まって、どんなふうに人の心が傷ついたり、ある行動をとってしまったり、といった「遅い情報」を伝えます。

 これは、「メディア」をキーワードにしたシンポジウムでの発言です。これを踏まえると、メディアとは、「速い情報」と「遅い情報」という視点で捉えることができるかもしれません。(シンポジウム内では「遅い情報」としての文学がこれからの国語教育には求められているとの見解が示されましたが、これはまた別の話ですので今回は割愛します。)
 先の言葉のように、物語などの文学が「遅い情報」とすれば、「速い情報」の代表的なものとして新聞以外にもインターネットなどがその筆頭としてあげられるでしょう。ただ、NIE的な観点から言うと、この「遅い」「速い」の区分は違った捉え方もできるように思います。

NIEは“速くて遅い”?

 新聞は、前述のとおり、写真や見出しといった分かりやすい情報を提示するというメディアの特性の上では、「速い情報」と言える一方で、NIEという活動を通して子どもたちに情報を噛み砕かせることで、「遅い情報」としての面も持ってくるのではないかということです。特に、紙媒体の情報源である新聞というメディアは、容易に置換できるインターネットなどのメディアに比べると、「遅い情報」としての素質を持ち合わせていると考えられます。「速い情報」でもあり、「遅い情報」でもある新聞は、ネット等のメディアが持ち得ない可能性を内包しているとも言えると思いますが、みなさんはどのように感じますか?

 実践指定校でなくとも、NIEは可能です。近年のNIEの高まりによって、実践集なども数多く発行されています。まずは、子どもたちを新聞に触れさせてみてはいかがでしょう。新聞に親しみ、“新聞を読解できるリテラシー”を獲得させることで、子どもたちの「生きる力」の一助となるのではないでしょうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2009/8/5 17:22:13
    NIEが広まるよりも、新聞の凋落の方がスピードが速そうな気も?
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