きょういくじん会議
まじめなニュースからやわらかネタまで、教育のことならなんでも取り上げる読者参加型サイト
学生を助ける奨学金―望まれる企業の参画
kyoikujin
2009/11/17 掲載
世界の遺児100人の夢 (岩波ジュニア新書)

 14日の毎日新聞の記事によると、生命保険会社のアフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)が、2010年度のがん遺児奨学基金の募集を開始したとのこと。この基金は1995年に設立され、当初は50人程度だった奨学生も年々増え09年は1400人近くとなっています。がんで稼ぎ手を失い支援を必要とする学生が間違いなく一定数いることを考えさせるデータではないでしょうか。

 奨学金とは一般的に、支援がなければ勉強をしていくのが困難な学生に対する補助的なものや、優秀な学生に対してより一層の活躍や成果を期待して支払われるものという2種類があります。もっとも多くの人に利用されているのは日本学生支援機構(JASSO)の奨学金と言われていますが、08年10月17日のきょういくじん(JASSO)でもお伝えしたように、奨学金の貸与終了後に返済を滞納する人が増え、その回収に苦慮しているようです。

 他にも冒頭でお伝えしたアフラックのように、色々な理由で保護者を失った学生を支援するあしなが育英会なども、街頭での募金を呼びかける姿をどなたも見かけたことがあるかと思います。

企業による基金

 一方、企業による奨学金も数多くありますが、こちらは基本的には大学生や大学院生、研究者などを対象としたものが多く、支払いの条件として将来その企業へ優先的に勤める必要があるものやないもの、返還の義務があるものやないものと様々のようです。

 07年に日本経団連が発表した、大学・大学院生への企業の奨学金に関するアンケート調査結果は、対象が日本経団連内の産業技術委員会に参加する委員会社であり、基本的にはいわゆる大手企業と言われる会社に対するアンケートです。このアンケートによると、36%の企業(回答69社中25社)が大学生や院生に対し、なんらかの形で奨学金を支給しているようです。この数字は意外にも多いような気もしますが、一方で半数以上の企業ではそのような取り組みがないということの表れとも言えます。

 奨学金に取り組まない理由のひとつに、基本的に企業の奨学金は特定の大学との取り決めで払われるもので、

企業として特定大学とだけ付き合うのは難しい

といった理由をあげる企業もあるようです。また、具体的な企業名などはあがっていませんが、

制度を持ちながら有名無実化していたので積極的にPRしていく予定

と語る企業もあり、まだ活用しきれていない部分の掘り起こしが期待されるところです。

 奨学金を必要とする学生には、「それがなければ勉強を継続していけない」「研究により没頭するため」など様々な理由があると思います。前述した「特定の大学とだけ付き合うのは難しい」という理由で取り組まないのであれば、複数の企業の出資による複数大学への提供など、より大きな枠組みで取り組むことはできないでしょうか。

 世の中全般が経済的に大変な今だからこそ、少しでも余力のある企業には、より積極的な支援への参画が望まれるところです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2009/11/18 16:37:19
    営利団体である企業が個人に奨学金を出すのは違和感があります。
    野球で問題になった栄養費などのように、青田刈りに使われそうです。
コメントの受付は終了しました。