
3月30日の産経新聞記事によると、検定合格した小学校1、2年生の教科書には、「因幡(稲羽)のシロウサギ」「ヤマタノオロチ」「海幸彦と山幸彦」などの神話が掲載されているそうです。
3話とも、『古事記』に載っている神話です。教科書では、1、2年生向けにやさしく書かれているのだろうと思いますが、ここでは、「因幡のシロウサギ」について、原典からこのお話をおさらいしてみましょう。
『古事記』掲載「稲羽のシロウサギ」のあらすじ
オホナムヂの神と八十神(やそがみ)と呼ばれる多くの兄が、稲羽にいるヤガミヒメに求婚に行く途中、ウサギに会います。ウサギはサメをだまして海を渡ろうとしたのですが、渡りきる直前にだましていたのだと口を滑らせてしまい、仕返しに皮をはがれていました。
先にウサギに出会った兄たちは、ウサギにうその治療法を教えます。うそと知らず実行したウサギは、より傷がひどくなってしまいました。その後、兄たちの荷物を背負わされて、あとから追いかけていたオホナムヂは、ウサギから事情を聞くと「真水で体を洗い、ガマの穂に包まるように」と教えました。
オホナムヂの教えた方法で回復したウサギは、ヤガミヒメはオホナムヂと結婚すると予言します。そして、本当にヤガミヒメは八十神の求婚を断り、オホナムヂと結婚するのです。
オホナムヂの神
ウサギに正しい治療法を教えたことから、オホナムヂには医療の知識があることを示し、それにまつわる力のあることを示しているともいわれています。
オホナムヂは、「ヤマトノオロチ」の主人公スサノオの子孫。オホナムヂはオホクニヌシ、アシハラシコヲ、ヤチホコなど別名があり、『古事記』のなかでも特に活躍する神様です。天に対する地にいて、地の神々を鎮め、そして最後には、天から降ってくる神に地(日本国土)を譲ることになります。
前出の産経新聞記事によると、教育出版は「ヤマタノオロチは戦いや殺人で、海幸は最後に兄弟げんか。2年生が読むにはどうか…」と話しているそうです。しかし、この話も兄弟の仲は悪く、オホナムヂは八十神たちに荷物を背負わされ、求婚も兄たちの後からしかできませんでした。しかもこの後、ヤガミヒメに選ばれなかった八十神は、オホナムヂを恨み、殺してしまいます。もちろん重要な役割を担うオホナムヂは母の助けを得て生き返るのですが、ウサギや八十神もサメをだましたりうそをついたりと、あまり感心できない話も含まれています。
神話に出てくる神々が実に人間らしく、立派な性質でないことはよくあることです。こういった「人間らしさ」も小学生に神話を教える意味の一つである…とも考えられますが、いかがでしょうか。
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上の記事、リンク先から、各社の神話の掲載は、
東書…ウサギ、オロチ、海幸山幸
学図…オロチ
教出…ウサギ
光村…
日文…
まで分かったのですが、各社のその他の神話の掲載はどうなっているのでしょうか?とくに、ウサギを採択した残り2社について、ご存知であればお聞きしたく存じます。
また、不躾な発言で大変恐縮ですが、上の記事、神の名前は「オホムナヂ」ではなく「オホナムヂ」ではないでしょうか。ご確認いただければ幸いです。
それでは失礼いたします。
ご指摘の通り「オホナムヂ」とさせていただきました。
大変失礼いたしました。
教科書掲載作品の詳細については、記事以上の内容はまだ把握できておりません。
今後とも「きょういくじん会議」をどうぞよろしくお願いいたします。