きょういくじん会議
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原子力・エネルギー教育の準備をしよう―文科省が副読本を作成
kyoikujin
2010/5/11 掲載
持続可能な社会をめざすエネルギー環境教育の実践

 平成20年の学習指導要領の改訂で、社会科や理科では原子力やエネルギーに関する内容の充実が盛り込まれています。とくに理科では、23年度から、移行措置により中学3年生の最終単元で放射線について扱うことにもなります。教えるのが難しそうに思える原子力やエネルギーに関する教育ですが、最近、文部科学省をはじめとしたさまざまな機関が、学校現場で用いることのできそうな教材などを作成していますので、チェックしてみましょう。

文科省作成の副読本

 文部科学省研究開発局と経済産業省資源エネルギー庁は、原子力やエネルギーに関する副読本として、小学生向けに「わくわく原子力ランド」、中学生向けに「チャレンジ!原子力ワールド」作成したと発表しています。これは、学校現場での指導の補助的な資料として、現場の声を聞きながら作成したもので、新指導要領も意識して作られています。どちらも40ページ以上のボリュームのある冊子で、とくに「わくわく原子力ランド」は原子のしくみも習っていない小学生にはかなり難しいのではという印象も受けますが、どちらも発電のしくみなどについての基礎知識からはじまって、原子力発電における過去に起こった事故など、おさえたい事項に言及しています。教師用の解説もあるので、まずはこちらを一読しておくことをオススメします。
内容は、以下のサイトで見ることができます。
「あとみん」(原子力・エネルギー教育支援情報提供ホームページ)
「なるほど!原子力AtoZ」(資源エネルギー庁ホームページ)
 また、これらのサイトでは、これまでの原子力教育に関する実践例など載っているので、ぜひチェックしてみてください。

その他の原子力教育

 また、ほかにも文科省は委託事業などで、教育職員セミナー、出前授業、映像やイラストの貸し出しなど、さまざまな原子力教育を行っています。興味深い事業としては、上記「チャレンジ!原子力ワールド」でも紹介されていますが、簡易な放射線測定器「はかるくん」(リンクははかるくんweb)の貸し出しなどを行っています。これは、自分の部屋などの放射能を調べることができるので、放射線をぐっと身近に感じることができるため、放射能についての学習の動機付けとしてはよい試みなのではないかと思われます。

 ちなみに、文科省以外でも、学校の授業で使うことを目的とした教材がつくられ、無料で公開されています。 電気事業連合会による教材は新指準拠と謳っており、板書例や指導計画まで提示されています。企業作成の教材となると、原子力の必要性、プルサーマルの安全性などばかりクローズアップされてしまう気もしますが、たとえば、「偉人たちとの授業」のビデオは「放射性」「放射能」「放射性物質」のちがいなどを理解させるためのビデオ教材で、基本的な知識を与える教材として充分使えるのではと思います。

 現在、原子力やエネルギーの問題は日本において重要な課題のひとつとなっています。つい先日には、ナトリウム漏れ事故で運転を休止していた高速増殖炉「もんじゅ」の運転が再開し、市民団体が安全性への不安から抗議文を出したり、破損燃料検出装置が誤警報を出すなどの問題もありました。また、昨年度はプルサーマル発電が始まりましたが、なかなか見通しの立たない核燃料サイクルが問題になっています。原子力発電、エネルギー問題は、わたしたちの生活と切り離せません。これらについて、小学生や中学生のころから興味をもち、正の側面・負の側面をきちんと理解することで、意見をもって自分で判断していく力を養う教育が、いま求められているといえそうです。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2010/5/14 13:08:46
    22年度の文科省の原子力・エネルギー教育支援事業概要が決まったようです。
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