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義務教育で大切なのは、子どもを自立させることです。
自立に必要な、知識や技能、姿勢を身に付けさせることです。
自立ができるためには、自分の行動を律することができなくてはなりません。しかし、この「自律」はなかなか身に付きません。
最初は、人に言われてやっている「他律」から入ります。そして、半分だけ自律ができるようになる「半自律」へと進みます。最終的に、自分で自分の行動を律する「自律」ができるようになってきます。
他律のときは、教師がルールとマナーを教えていかなくてはなりません。あれこれと口うるさく言うこともあるでしょう。例えば、「人が話しているときは黙って聞きます。」、「先生には敬語を使います」といった具合です。
このとき、ルールやマナーを身に付けていなかった子は、「今年の先生は口うるさいな」と感じます。本当は今までルールやマナーを言ってくれる人がいなかっただけなのですが、その子にとっては、相対的に口うるさいわけです。
若い先生は、「口うるさい先生」と言われると、落ち込んでしまう場合もあります。しかし、ここは頑張りどころです。子どもが露骨に嫌な顔をしていても、気にしないことです。むしろニコニコして、「ダメなものはダメだよ」と言う余裕が欲しいところです。
そうして、教師からの他律から、だんだんと半自律へと進みます。
では、半自律の段階では、教師はどう指導すればよいのでしょうか。
他律のときは、望ましい行動を教えていました。趣意説明もしていました。「こういう理由だから、こうした方がいいよね」と。
実は半自律の段階では、今まで通り「教えるだけ」ではいけません。今までと少しだけ指導を変えていく必要があります。
「こういうときはどうしたらいい?」
「自分でどうしたらいいと思う?」
「これからどうしたらいいですか?」
このように、「状況を説明しつつ、その後の行動を考えさせる」ようにするのです。
例えば、宿題をしない子がいたら、次のように指導します。
まずは他律です。
「宿題をしない人は、休み時間にやってもらいます。宿題はみんなの大事な義務だからね。」
このように、ルールや趣意を説明します。
さて、ルールや趣意が子どもに伝わったら、今度は半自律の段階に入ります。宿題をやる習慣のない子は、毎日のように宿題を忘れてきます。しばらく宿題忘れが続いたときに、子どもに尋ねます。
「宿題ができないのはどうしてかな?」
ここで子どもが、「家に帰っても時間がないから」と答えたとしましょう。
どうして時間がないのかな?」
と続いて質問します。
「家に帰ってテレビを見てから、友達と一緒に遊んで、夜は用事があるから…。」と答えます。
そして、
「じゃあ、いつなら宿題ができそうかな?」
「宿題を少しでもする時間を生み出すにはどうすればいいかな?」
と子どもに考えさせます。
こうして、自分の行動を自分で考えて律するように導いていくのです。
子どもは、自分で自分の行動を律することを考えるでしょう。テレビを少なくするとか、少しだけ早起きして宿題を朝にしておくとかです。
実は、自律ができるようになるには、この「半自律」の時期の指導が決定的に大切になります。「他律」から、いきなり「自律」を目指すと、無理が出てきます。「子どもが指示待ちで、自分から動けない」と愚痴ってしまうような状態になります。
そうではなく「半自律」段階の指導で、自分の行動は自分で考えて決めるものだという姿勢を育てることが大切になるのです。「他律」の後の「半自律」の指導があるかどうかで、「自律」にいけるかどうかが決まるのです。